妹に許婚を奪われたら、冷徹CEOに激愛を注がれました~入れ替え婚!?~
 大人たちに呼ばれてリビングへ戻ってきた頃には、二人はすっかり打ち解けており、まるで仲のいい本当の兄妹のようにピッタリと寄り添って座っていた。

 普段はお姉ちゃんという認識でいることが多い円香だから、年上の朔也の存在は新鮮で、構ってもらえるのが嬉しくてたまらない。朔也のほうもどうやら円香のことを気に入ってくれたようで、朔也に寄り添う円香の頭を優しく撫でてくれる。

「円香ちゃん、かわいい」

 柔らかく微笑みながら甘いことを言う朔也に円香は幼心にも胸を高鳴らせた。

「なんだ。朔也は随分と円香ちゃんのことを気に入ったんだな。まあ、円香ちゃんは本当にかわいいもんな」

 康弘のそんな台詞に朔也はすぐさま同意する。

「うん。すごくかわいい。僕、ずっと円香ちゃんと一緒にいたい。だからね、僕、円香ちゃんと結婚する。僕のお嫁さんは円香ちゃんがいい」

 結婚のワードに幼い円香もさすがに驚く。それでも不思議と嫌な気持ちにはならなかった。むしろドキドキとしていた。

「ははは。お前にしては珍しく大胆だな。だが、朔也だけが望んでもダメだ。お互いに結婚したいと思っていないとダメなんだぞ?」

 康弘が朔也をそんなふうに諭せば、朔也は真っ直ぐに円香を見つめてくる。

「円香ちゃん、僕と結婚してれる?」

 首を傾げながら朔也が問いかける。幼い円香は結婚を正しく理解はしていなかったが、この優しいお兄ちゃんと一緒にいられる約束だと思えば、ほとんど躊躇いなく「いいよ」と返していた。


 円香のその返しに驚いたのは、朔也でも康弘でもなくて、父の篤彦である。

「円香!? 落ち着きなさい!」

 父は随分と慌てた様子だが、円香にはその理由がわからなくてポカンとする。そんな円香たち親子の姿を、康弘が肩を震わせて笑いながら見ていた。

「ははっ。篤彦、落ち着くのはお前だろ。眉間に皺が寄っているぞ」
「しかたがないだろう」
「子供のかわいいやりとりだろ? まあ、うちとしては円香ちゃんに朔也の許婚になってもらえたら嬉しい限りだけどな」
「はあ……何が悲しくて五歳の娘の結婚話をしないといけないんだよ……まあ、結婚はともかく、二人が打ち解けてくれたのはよかったが」

 父親たちがそんなやり取りをする中、円香と朔也は互いに微笑み合っていた。その結婚の約束は子供同士のたわいないものであったけれど、円香と朔也それぞれの心にはしっかりと刻み込まれていた。
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