日常を返せ！
　誰もいないことを確認した男子生徒は、それを自分のカバンに入れて足早に店を出て行きました。

　わたしは慌てて男子生徒の後を追って、彼の腕を掴んで叫びました。

「鞄に入れた物を元の場所に戻しなさい！」

　男子生徒は震える手で鞄からマンガを取り出しました。

　このまま本屋に戻って返すのかと思いました。

　しかし、男子生徒は持っていたマンガをわたしに押し付けて、その姿をスマホで撮影しました。

「……え？」

「誰か、万引きがいるぞ‼︎」

　男子生徒の行動に呆気に取られていると、男子生徒は大声でそう叫びました。

　その声に本屋から店員が駆け寄って、わたしの腕を力強く掴みました。

「なに、離して！」

「うるさい、この泥棒！　お前か！　最近うちの店で万引きをしていたのは！」

「違います！　それはあの男がしたことです」

　わたしが男子生徒を指差すが、彼は心外だと言わんばかりに首を横に振りました。

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