日常を返せ!

無知の子

 そう言い終えた羽間は楽しそうに笑う。

 羽間の話を聞いて、頭の中で微かな記憶が引っかかった。

 確かに中学生の時に友人を待って暇を潰していた本屋で万引きが起きた。

 詳しいことは覚えてないけど、店先で揉めていたことは覚えている。

 その時に友人から連絡があり、集合場所に着いたと言うので合流する為に通り過ぎようとした。

 こんなに騒いで恥ずかしくないのかな? と、わたしが思っていた時だった。

 女はわたしを見つけると、自分の無実を証明しろと懇願してきたのだ。

 こんなのに捕まると、いつ解放されるか分からないし、友人を待たせる訳にもいかない。

 わたしは、女を振り切って友人の元へ行き、楽しく過ごした。

 その後、SNSで女が万引きしたという投稿が写真と動画が流れていたが、わたしは何もしなかった。

 ただ、やっぱり万引きしてたじゃん。くらいの感想しか持っていなかった。

< 270 / 296 >

この作品をシェア

pagetop