日常を返せ!
 わたしの肩を羽間が叩く。

 振り向くと食事を終えた羽間が立っていた。

「じゃあ、職員室行きましょう。具合悪そうに口元押さえて入ってくださいね。あと、わたしが説明をしますので、新田さんは頷くだけにしてください」

「あんた、随分と悪い子だね」

「これぐらい可愛いものだと思いますよ?」

 そう言って首を傾げる羽間が少し面白く、クスクスと笑うと何で笑っているのか分からない羽間が、さらに首を傾げた。

 そんな羽間を見ながら弁当を片付けて立ち上がり、二人で職員室へ向かった。

 羽間に言われた通り、口元を押さえて俯き気味にしていると、羽間が職員室へ入って行った。

「失礼します、壇先生と佐藤先生はいますか?」

 少し元気のない声で羽間が尋ねると、呼ばれた二人の先生がこちらに近づいて来た。

 壇先生は羽間の担任で生活指導もしている厳つい男教師で、佐藤先生は私の担任でおっとりとした女教師だ。

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