御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 ただ、傍から見たら〝やんわり〟とは見えなかったのかもしれない。
 先日は近くにいた男性社員が『まあまあ』と間に入り、『わからないところは、俺が教えるよ』と、彼女を連れて行ってしまった。
 その後、私のいないところで『あれでは、三浦さんが委縮してしまう』『そんなつもりはなくても、いじめのように見える』などと言われているのを聞いて愕然とした。

 決して悪意はなかったのに、そんなふうに捉えられると知って怖くなる。
 あの場ではそれなりに素直に話を聞いてくれた三浦だったが、実際には嫌な思いをしていたのかもしれない。
 それを本人に確かめる勇気もなく、会話をするのにますます気を遣うようになった。
 注意をしなければ彼女のためにならないのはわかっているのに、自分を守るためにそれもできなくなっている。

「それは……急ぎの案件ですね」

 ほかの仕事は私がカバーをするしかないようだと、思案しながら応じる。

「ごめんなさい」

 突然ガバリと頭を下げた三浦さんに、内心でギョッとした。
 きつく言ったつもりはないし、まして謝罪してもらいたかったわけでもない。
 でも実際には、仕事が遅いと攻めているように聞こえたのだろうか。

「大丈夫ですから」

 なんとかそう言い添えると、ようやく彼女は顔を上げてくれた。

「私ったら、いつも成瀬さんに迷惑をかけてばかりで。ごめんなさい」

 しゅんとしたその表情はかわいく見えるが、周りの目が気になるからやめてほしい。これではまるで、私が彼女の至らなさを叱責しているようだ。

「迷惑なんて思っていません。それでは、お中元の方はよろしくお願いします」

「はい」

 ようやく笑みを見せた彼女にほっとした。
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