御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 私の話でひとしきり盛り上がった後に、渚が姿勢を正して真剣な顔をした。

「小早川さん。瑠衣はこれまで、ご両親に苦しめられ続けてきたんです」

 打って変わって落ち着いた様子で話す彼女に、葵さんも神妙な顔つきになる。

「私と出会うまでは、本当にひとりっきりで耐えてきたんです」

 声を震わす渚につられて、私の目にも涙がにじむ。
 ここまで思ってくれる彼女と出会えたのは、私の一生の宝物だ。

「瑠衣をいっぱい愛して、大切にしてあげてください」

「もちろんです。瑠衣は私の、最愛の妻ですから」

 きっぱりと言いきった葵さんに、渚が満面の笑みを浮かべた。

「返品は、受け付けませんよ」

「返せと言われても、絶対に渡しません」

 いたずらな口調の彼女に、葵さんまで同じように応じる。

「ちょ、ちょっと、渚。あなたの気持ちは本当にうれしいけれど、これではまるで私の保護者みたいだわ」

「みたいって、実際そんなようなものでしょ」

 からかう口調の彼女に、葵さんが声をあげて笑う。

「あなたという親友が、瑠衣の傍にいてくれてよかった」

 うつむいた渚が、目もとを拭う。
 その姿に、私の頬にもこらえきれなかった涙がつたった。
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