御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
* * *

 休日に、葵さんと連れ立ってカフェにやってきた。
 今日はここで、彼を渚に紹介する予定だ。

 瑠衣! こっちよ」

 時間よりも早く到着したというのに、彼女はすでに席に着いていた。店の入口で待つ私たちに向けて、立ち上がって大きく手招きをしている。

「ずいぶん早いのね」

 興奮を隠しきれないところが、いかにも彼女らしい。

「だって、やっと瑠衣の旦那様に会わせてもらえるのよ。待ちきれなかったんだから」

 満面の笑みを浮かべた彼女に、思わず苦笑した。

「それで、そちらが?」

 私の背後に立つ葵さんに、渚の視線が向く。

「そう。でも、まずは座ろう」

 彼女の肩をポンポンと叩きながら、席に着くように促した。

「こちらが夫の葵さんで、彼女が親友の渚」

 私がお互いの紹介をして、ふたりが簡単なあいさつを交わす。

「それで、小早川さんは瑠衣のどんなところを好きなんですか?」

 続けてこちらが口を開く前に、待ちきれなかった渚が問いかけた。
 私とは正反対の積極的な彼女を前にして、葵さんは少し驚いているようだ。

「不器用なところ、ですね」

 それのどこがいいのかと首をかしげると、葵さんが微笑みかけてきた。

「わかります!」

 共感する渚に、ますます困惑する。

「すべてを自分ひとりで抱え込もうとして、けれど、どうにもいかなくなると誰もいないところで弱音を吐き出す。その不器用な健気さが、好意を寄せるきっかけだったんです」

「瑠衣ったら、なんでも簡単にこなしていそうに見えて、本当は努力家な上にすごく繊細なんですよ」

 渚の言葉に、葵さんがうなずく。

「それで気を許した相手にだけは、素直すぎる顔を見せるの! 本当に、かわいいんだから」

 夫と親友の仲が良好なのはうれしいが、話している内容が恥ずかしすぎる。私が口を挟む隙間はほぼなく、渚のマシンガントークに葵さんが同意を示す時間が続く。
 ふたりの話を極力聞こえないふりをして、なんとかやり過ごしていた。
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