御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「昨日だって彼女、涙ながらに謝罪していただろ」

「それは……」

 演技だったと、ここで明かしても信じてはくれないだろう。
 この場に私の味方になってくれる人はいない心細さに、言葉が出て来なくなる。

「いいよ、三浦さん。わからなかったら手伝うから、一緒にやろうか」

 彼女はもう二年目の社員で、甘えてばかりいられる立場ではない。入社一年目の社員だってもっと自主的に取り組む姿勢を見せているというのに、このままでいるのはまずい。

 それでもこうして三浦さんを庇うのは、やはり私の言い方に問題があったからだろうか。それとも、彼女は無条件に守ってあげたくなるタイプだからだろうか。
 僻みまじりの嫌な考えを抱きかけて、慌てて振り払った。

 そんな私に、三浦さんがチラリと視線を向けてくる。それはまるで田中さんの手を借りてもいいかと、私に許可を求めるような遠慮がちなものだった。
 私に許しを請う必要はないのにわざわざそうするのは、周囲へ与える印象を計算しているのかもしれない。これでは、ますます私が悪者にされてしまいそうだ。

 自分が愛想のよい人間だったら、誤解はされなかったはず。
 もっと要領のよい性格だったら、今よりずっと生きやすいのだろうか。
 自分が持ち合わせていないものばかりが頭に浮かび、虚しくなる。
 言い返したいことはたくさんあったけれど、私には無言で席に着くことしかできなかった。
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