御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
* * *
翌日、定時をわずかに過ぎたところで、総務課へ葵さんがやってきた。
「あっ、小早川さんじゃないですか! どうされたんですか?」
彼の来訪に目ざとく気づいた三浦さんが、かわいらしい仕草で駆け寄っていく。
彼女の机の上はすっかり片づけられており、まさに帰ろうとしていたところだったらしい。
そんなタイミングで仕事の可能性がある訪問など、いつもの三浦さんなら反応していない。相手が葵さんだったからこその行動なのだろう。
彼女がとくに見目のよい男性に媚を売るのは日常茶飯事で、一部の女性社員はよく思っていないという話は頻繁に漏れ聞こえてくる。
普段ならさほど気にしないのに、彼女のあからさまな態度に苦々しい気持ちになったのは、相手が葵さんだったからだろうか。
「君には用はないから――瑠衣!」
田中さんをはじめ、三浦さんが甘えた態度を取れば鼻の下を伸ばす男性もいる。
けれど葵さんは、彼女に見向きもしなかった。彼のその様子に、密かに安堵する。
ただ、ひと目を憚らずに下の名前で呼んだせいで、私に視線が集まってしまった。
「瑠衣? なんで成瀬さんを名前で呼んでいるのよ」
三浦さんの不機嫌なつぶやきはやや大きくて、葵さんにもきっと聞こえているはずだ。けれど彼は、まったく反応を示さない。
葵さんの言動に、周囲がざわめく。さすがにいたたまれなくて、慌てて席を立った。
翌日、定時をわずかに過ぎたところで、総務課へ葵さんがやってきた。
「あっ、小早川さんじゃないですか! どうされたんですか?」
彼の来訪に目ざとく気づいた三浦さんが、かわいらしい仕草で駆け寄っていく。
彼女の机の上はすっかり片づけられており、まさに帰ろうとしていたところだったらしい。
そんなタイミングで仕事の可能性がある訪問など、いつもの三浦さんなら反応していない。相手が葵さんだったからこその行動なのだろう。
彼女がとくに見目のよい男性に媚を売るのは日常茶飯事で、一部の女性社員はよく思っていないという話は頻繁に漏れ聞こえてくる。
普段ならさほど気にしないのに、彼女のあからさまな態度に苦々しい気持ちになったのは、相手が葵さんだったからだろうか。
「君には用はないから――瑠衣!」
田中さんをはじめ、三浦さんが甘えた態度を取れば鼻の下を伸ばす男性もいる。
けれど葵さんは、彼女に見向きもしなかった。彼のその様子に、密かに安堵する。
ただ、ひと目を憚らずに下の名前で呼んだせいで、私に視線が集まってしまった。
「瑠衣? なんで成瀬さんを名前で呼んでいるのよ」
三浦さんの不機嫌なつぶやきはやや大きくて、葵さんにもきっと聞こえているはずだ。けれど彼は、まったく反応を示さない。
葵さんの言動に、周囲がざわめく。さすがにいたたまれなくて、慌てて席を立った。