御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
 つい二杯もアルコールを頼んでしまったために、思考がクリアでない。それに昔語りをしてしまったことで、少なからず動揺しているのかもしれない。
 そう責任転嫁をして、彼の主張を無理やり受け入れた。

 わずかな気まずさをごまかすように、料理に手を伸ばす。そうしながら、ふと浮かんだ疑問を口にした。

「ところで、いつまで仮の夫婦でいるのでしょうか」

「そうだな。瑠衣が自信を持てるまでってところかな」

「自信を持てるまで、ですか」

 予想外の返答に、首をかしげる。

「俺としては時間をかけるつもりはない。ただこちらの事情を考えると、それなりに長くなるかもしれない」

 それは想定済みだと、うなずき返した。

「それに、スピード結婚しておいてすぐに離婚したなど、さすがに体裁が悪すぎる。しばらくは付き合ってもらいたい」

「わかりました」

 今日のところは、葵さんがごちそうしてくれた。
 それからタクシーに乗り込み、自宅まで送ってもらう。

「ありがとうございました」

 マンションの前でタクシーを降り、車内に残った彼を振り返る。開いた窓から、葵さんが顔をのぞかせた。

「ああ、こちらこそ付き合ってくれてありがとう。それじゃあ、瑠衣。末永くよろしく」

 その妖艶な笑みは反則だ。
 なにも返せないまま、走り去る車を呆然と見つめた。

「末永くって……どういう意味?」

 意味深な言葉を残した彼に、思考がかき乱される。
 離れてもなお、葵さんのせいで落ち着けないままでいた。
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