御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「それに、会社のマウント女もなんなのよ。大方、瑠衣が美人だからひがんでいるんでしょうよ。いいこと、瑠衣。自分のお古を譲ってやったくらいの気持ちでいればいいのよ」

「お古って」

 好戦的な物言いは、いかにも渚らしい。

「とりあえず、瑠衣が落ち込んでいないようでよかったわ」

 そうよね?と確かめるように、じっと見つめられる。
 出会ったときから、渚は感情の表れにくい私の真意をこうして探ってくる。最初は戸惑っていたが、もうすっかり慣れたし嫌だとも思わない。

「あれ? それなら瑠衣。あなた、誰と結婚するのよ」

 我に返った渚から訝しげな視線を向けられて、ギクリと体を強張らせた。

「それが、ね。同じ会社の人で、小早川葵さんっていうの。歳はたしか三十二歳だったかな」

 真っすぐに彼女を見られなくなり、伏し目がちになる。
 敏感な渚には、私のこんな些細な変化からいろいろと読み取られてしまいそうだ。

「――弘樹に浮気されたり人間関係が上手くいっていなかったりして、すっかり落ち込んでいたところで声をかけられて、そのまま意気投合したの」

「遠藤君もマウント女も、許すまじ!」

 拳をぐっと握った渚が、ふと真剣な顔に戻る。

「でも、瑠衣。結婚って、そんな簡単に決めるものじゃないでしょ? 慎重派のあなたらしくないわ」

「結婚は、タイミングや勢いも大切だって言うわ」

 きっぱりと言い返した私に、渚が苦々しい顔をする。
 まさしくそうして一緒になった私の両親が、結果的に離婚を選んだことを彼女も知っている。だから、思うところがあるのだろう。
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