御曹司は離婚予定の契約妻をこの手に堕とす~一途な愛で溶かされました~
「……まあ、いいわ。それで、その小早川さんってどういう人なのよ」

「私のために、心を尽くしてくれる人だよ。今のままでいいのか。変わりたいのなら助けるって、言ってくれて」

「なかなか見込みのある男じゃないの。瑠衣には、どんどんリードしてくれる年上の男性がお似合いだって、常々思っていたのよ」

 渚の態度が軟化したことに、ほっとする。

「後から知ったんだけど、彼、勤め先の社長の息子だったの。将来的には、会社を継ぐことになるって」

「うっそ、すごいいじゃない。それなら、経済的な心配はないわね。立場のある人なら、とりあえず信頼はできそうだわ」

 彼の立場を知って結婚に合意したわけではない。
 でも、傍から見た葵さんの評価はそういうものなのだろう。

「すごく誠実な人で、私の両親の事情も理解してくれている」

 渚はいつだって、私に頼れる親族がいないのを気にかけてくれていた。
 これが彼女を納得させる決め手となるだろうと、わかっての発言だ。

「今日は、渚に婚姻届のサインをお願いしたかったの。私には、ほかに頼みたいと思う人もいないから」

 彼女のガードを崩すだめ押しのように聞こえてしまうけれど、私の本心だ。

「瑠衣……」

 渚の瞳に、悲しみが滲む。

 事実を明かせないのが、本当に申し訳ない。その代わりに、葵さんのもとで絶対に変わってみせると誓いを新たにした。
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