星のような僕らは
天体観測

一番好きな時間

今日も私は昨夜に思いついた歌詞をまとめたノートを持って音楽室に入る。
「梨歌、おはよ」
「おはよう、蒼也。曲、どんな感じ?」
曲作りのパートナーの蒼也は作曲ノートと睨めっこしながら、ギターを弾いていた。
「今、やってる。歌詞と合わせるから、ノート見せて」
「オッケー。私も準備するね」
「ああ」
私は準備室からベースギターを取りだし、アンプに繋げて、チューニングを済ませる。
よし、準備完了!
私は一度、ギターを台に立てかけ、床に座り込んでいる蒼也の隣にしゃがみ込んで曲の仕上げが終わるのを待った。
曲を作っている蒼也の横顔を見るのが好きだった。
とても、真剣で、音楽にどう向き合っているか、よくわかる。
そして、蒼也の手にあるギターから生まれる音が紡ぐ歌が私の心に響いてくる。
この瞬間がこの時間が好きだった。
「出来た。見る?」
「最初から蒼也が弾いて」
「駄目だ。自分で弾いて分からなかったら、教える。
俺は歌詞も覚えないといけないんだ。
割り振りして来たんだろうな」
「あっ」
「また、詞だけ作ってきたのか。
しょうがない。ノート貸せ。俺がやる」
「ごめん」
「謝る暇あったら、練習しろ。ほら」
と蒼也は作曲ノートを私に渡し、作詞ノートを開いた。
私は作曲ノートに書かれた音を一つ一つ確認しながら歌詞を音に乗せていく。
私の歌に乗って蒼也も歌の割り振りをしながら、一緒に歌っていた。
そして、急に蒼也の歌声が止まった。
「これ、いいな。昨日、書き出した感じか?」
「えっ?」
蒼也が私に見せたページは星をイメージして書いていた歌詞だった。
「そうだよ。でも、上手くまとまらないから、しばらく考えるつもり」
私がそう言うと少し残念そうにしていた。
「完成したら、また、見せてくれ。曲、作るから」
「ありがと」
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