ハルとミモザ
「それよりさ」

それより!?

私はそれよりじゃないのに!!

「俺、いつ羽留のこと嫌いっつった?一度も言った覚えねぇんだけど」

「えっ……。た、確かに、言われたことはない…かも…。でも、慎ちゃん私が高校入学してから冷たくなったし、いつも突き放してくるし、私のこと嫌いなのかなって…」

「…別に嫌いじゃねぇよ。だからもう泣くのやめろ」

「じゃあ…なんで冷たくするの?」

「それは……、自制心を鍛えるため、かな」

「自制心?どういうこと?」

「羽留といると、つい気が緩んで自制心保てなくなりそうだから」

………つまり、どういうこと?

慎ちゃんの言っている意味が全く理解出来ない。

私は頭を抱えた。

「羽留」

慎ちゃんに呼ばれて顔を上げると、そこにはいつもの冷たい顔じゃなく、優しい顔をした慎ちゃんの姿があった。

「羽留だけはあり得ないって言ったの、あれ嘘だから。今日だけじゃない。毎年同じこと返してるけど、あれ全部嘘だよ」

「……っえ、それって…」

つまり、あり得ないことないってこと?

あり得るってこと?

それって、結婚しても良いってこと?

「さてと、俺そろそろ戻るわ」

「えっ!?まだ話途中だよね!?」

「終わったよ。今はこれ以上、何も言えねぇから」

またいつもの冷たい態度の慎ちゃんに戻る。

でも今、確実に私達の関係に変化があった。

「分かった、今はこれ以上聞かない。でも、私が18になったらちゃんと教えてね?」

「検討しとく」

そう言って慎ちゃんは出ていこうと扉に手をかけた。

「あ、そうだ」 

慎ちゃんは足を止めてこちらへと振り返った。

「羽留は花言葉って知ってる?」

「聞いたことはあるけど、全然詳しくないよ」

「だと思った。ま、そっちのが都合良いんだけどな。…1つだけ教えといてやるよ」

「1つだけ?」

「あぁ。黄色のミモザの花言葉」

「…!知りたい!」

私が食い付くと、慎ちゃんは優しく微笑みながら答えた。



「秘密の恋」



ーー-ーー-完ーー-ーー-
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