京の都陰陽師
 次の日、珱姫は帝に呼ばれた。
 晴明は珱姫だけ呼ばれたことに、不安を感じた。
 珱姫は帝の用意した牛車に乗って、帝のとこに行った。
 「帝、珱姫様が来られました。」
「すぐに通せ。」
「は!」
 珱姫は、すぐに帝の前に通された。
 「珱姫。
今日呼んだのは、他でもない。
陰陽師寮の蘆屋道満が、珱姫に会いたいと申してな。
わたしが珱姫を呼んだのだ。
蘆屋道満。
珱姫が来たぞ。」
「これはこれは…。
何とも美しい方ぞ。
わたしは蘆屋道満と申します。
良ければ、これから、陰陽師寮がどんなとこか、お見せしましょう。
いかがですかな?」
「それは良い事だ。
珱姫、見て参られよ。」
「は…はい。」
 蘆屋道満は珱姫を連れて陰陽師寮に連れて向かった。
 「昨日のことは、晴明に話したのか?
「晴明様には、申し上げました。」
「そうか。
正直だな。
お主の式神、かなりの出来栄えであった。
晴明とも張り合えるほどの力を持っているであろう。
どうだ?
違うか?」
「わたくしは、晴明様の命で式神を、使うだけにございます。
晴明様と対等とは思っておりません。」
「ほう…。
それは、勿体無い…。
お、着きましたぞ。
ここが、陰陽師寮です。
お入りください。」
「はい…。」
 珱姫は陰陽師寮に入った。
 「ここでは、天体観測を学んだり、暦の読み方をならったり、陰陽道の基礎を学べるとこと、陰陽道を実践できるとこ、寝食を共にできるとこがございます。
いかがですかな?
陰陽師寮は。」
「陰陽師になるのに大切な陰陽道を、学べるのはいいことと思います。」
「珱姫。
ここで、お主の力を見せてみては?」
「わたくしの力ですか?」
「そう。
ここでは、力の強いものが1番偉くなります。
珱姫は何処まで力があるのか、わたしは気になりますな。」
「それほどの力はございません。
買い被り過ぎではございませんか?」
「いやいや。
あの式神を操れるのだから、さぞ、凄い力の持ち主であろう。
いかがかな?
式神を出されてみては。」
 珱姫は仕方なく式神を出した。
 陰陽道を習っていた者、全員が、道満を見た。
 「これはこれは、道満様。
道満様が、式神を出されたのですか?」
 陰陽師達に陰陽道を教えていた、陰陽師が式神に感心していた。
 「いやいや。
わたしではありませんよ。」
「では、誰が?」
「こちらに居られる、珱姫ですぞ。」
「珱姫?
晴明の妻のですか?」
「そうです。」
「ほう…。
女性がこんな力を持っているとは、知りませんでした。
てっきり、道満様かと思いましたよ。」
 男尊女卑。
 この時代には、当たり前にあった。
 男性より強い陰陽師の女性など、存在してはならないのだ。
 「珱姫は女性だが、晴明ほどの実力を持っている。
この式神を見ればわかるであろう。」
「ふ…ふん。
女子には式神1体出すだけで、精一杯であろう。
無理をするでない。」
「この珱姫は、式神を何体も作れるのだぞ?
珱姫、見せてあげなさい。」
「お断りします。
わたくしは、晴明様の妻。
無闇矢鱈出すものでは無いと考えております。」
「そんなことを言って、本当は出せぬのであろう?」
「いいえ。
断じてそうではありません。」
「では、見せてみなさい。」
 珱姫はため息をついた。
 「それで、わたくしが出したら、女性のくせに生意気だ!と申されるのでしょう?
嫉妬されるくらいなら、馬鹿にされてる方が、まだ、いいです。」
「なんだ、その言い方は!
まるで、私たちより力がある!と言ってるようなもんではないか!!」
 陰陽師の指導していた人が、怒りを露わにした。
 仕方なしに、珱姫は式神を20体出した。
 「この式神は、これの倍は出せます。
どうですか?
満足されました?」
「女子がこんなに出せるわけがない!
どうやった?!」
「ほら、信じない。
だから嫌だったんです。」
「道満様の力を借りたな?」
「いやいや。
わたしは何もしてませんぞ?
全て、珱姫の力です。
女性でも強い方はいらっしゃいますぞ。
今、目にしたものがそうですぞ。」
「そんな、女子に負けるとは…。
私の陰陽力は、そんなにありません…。
おみそれ致しました。」
「いえ…そんな…。」
「珱姫。
他の式神達もお見せしては如何か?」
「道満様が、おっしゃるのであれば…。」
「では、出してみればいいでしょう。
生徒達の役にも立てますゆえ。」
「分かりました。」
 珱姫は式神を沢山だし、式神に命を出した。
 式神は言われた通り、街に出たり、屋敷に戻ったり、ここに止まってみたりしていた。
 「これが、わたくしの力です。」
「素晴らしい!
流石、珱姫。
香川殿も納得されたでしょうぞ。」
「納得いたしました。
良ければ、ここに居るもの達に、式神の出し方を、教えてやってくれませんか?」
「いいですよ。」
 珱姫は快く式神の出し方を教えた。
 「珱姫、助かりましたぞ。
生徒達も喜んでおいでですぞ。」
「そうですね。
わたくしは、そろそろ帰ります。
晴明様のお食事の準備がありますので…。」
「仕方ないですな。
今日はここまでにしますかな。」
「今日は?
どう言うことです?」
「帝に珱姫を陰陽師寮に入れることを、進言したいと思っておるのですぞ。」
「それは、無理です。
晴明様の元に居たいですから。」
「晴明はこの陰陽師寮の出。
寮に入ることは出来ますまい。」
「では、尚更、わたくしは晴明様の元から離れません。」
「珱姫。
ここに入れるのは、名誉なことなのですぞ?
何故断るのだ?!」
「晴明様が居ないからです。
失礼します。」
 珱姫は自分が出した式神を、全て消して、帰ろうとした。
 それを止めようとする蘆屋道満。
 その時、寮の戸が開いた。
 「道満!
珱姫を離せ!!
珱姫は僕の妻や!!」
「安倍晴明様!」
 そう口々に言う生徒達。
 「珱姫、帰ろう!」
「はい。
晴明様。」
 珱姫は晴明と手を繋ぎ、逃げようとした。
 それを止めたのは、蘆屋道満。
 「珱姫の可能性を潰す気か?」
「珱姫は陰陽師寮になど入らなくても、充分、僕のとこで学んでるし、陰陽道だって分かってる!
必要性がない!
それでは、失礼!!」
 晴明は強引に珱姫を連れて帰った。
 屋敷に帰ってから、晴明は珱姫に質問攻め。
 「珱姫!
なんで陰陽師寮なんかにおったんや?!」
「道満様に連れて行かれたのです。
帝も行くように。と…。」
「帝には言うておく。
2度と行ったらあかん!
道満は何を考えてるんや?」
「道満様に言われたのは、わたくしが陰陽師寮に入るようにと…。
わたくしは、晴明様の妻なので、晴明様と離れたくない!と申しました。」
「珱姫。
君には、僕の知ってる陰陽道を、教えているから、必要ないねん。
蘆屋道満は、珱姫を陰陽師寮に、閉じ込めたいんやろか?
それにしては、なんか違う…。
珱姫の式神のことを知ってて、何体も破壊した…。
最後の1体だけ、報告を許したのは…?
道満の考えが分からへん!」
「晴明様…。」
「珱姫!
これから、気を付けや?」
「はい。」
「帝には、僕と一緒やないと、珱姫は来れへん。と伝えておく。」
「分かりました。」
 その夜、道満の式神が晴明の屋敷にきた。
 「晴明様!」
「どうしたんや?!」
「お助けを!!」
「珱姫!!」
 珱姫が道満の式神に担がれていた。
 「珱姫は我らの主人、蘆屋道満様の元に連れて行く。
安倍晴明。
大人しく珱姫を渡すがいい。」
「式神のくせに生意気な口聞くやん!
珱姫は渡さへん!
帰って主人に伝えるがいい!」
「そうはいかぬ。
主人に珱姫を連れて行く。」
「させへん!!
帰りや!!」
「無理な答えだ。
さぁ、珱姫。
こちらへ。」
「お断りします。
わたくしは晴明様の妻。
夫なしで行くことは出来ません。」
「では、ここで勝負をしましょう。
お2人が式神を出し、ワタシと勝負をする。
ワタシが負ければ、珱姫を置いていこう。
ワタシが勝てば、珱姫をいただいて行く。
如何かな?」
「どんな勝負や?」
「ワタシを倒してみるがいい。」
「それが、勝負ってことやな?」
「そうだ。」
「分かった。」
「わたくしもやります!」
「それでは始めよう。
まずは、先制攻撃。」
 式神が式神を出した。
 「まずい!
これは、かなり強い!!」
「大丈夫です!
わたくしも出来ますから。」
 珱姫も式神を出し、式神が式神を出した。
 「ほう。
では、行きますぞ。」
 珱姫の式神も道満の式神も互角だった。
 「では、追加を行きます。」
 珱姫は式神青龍を出した。
 「な…!
ここで青龍?!」
「まだ出します!
白虎!朱雀!玄武!」
「まさかの4神!!
これには、勝てぬ!!」
「僕からもいくで!
青龍!白虎!朱雀!玄武!」
「まさかの4神が2体ずつ…!!
勝てるわけが…!!」
 道満の式神は、雄叫びをあげながら消えていった。
 「珱姫!!
大丈夫か?!」
「はい。
大丈夫です!!」
「なら良かった。
道満が珱姫をどうしたいか分かったで。」
「え?」
「道満は、珱姫を僕から奪いたいんや。」
「では、道満様にも式神を送りましょうか?」
「いや。
今送ったら、こっちの力の限界を知られてしまう。
そうなったら不利や。
このまま、様子を見よう。」
「分かりました。」
 次の日、また、蘆屋道満から式神が送られてきた。
 その式神も口が悪く、力勝負をしてきた。
 式神としては、晴明と珱姫の方が強かった。
 これが、何日も続いた。
 そんなある日、晴明の屋敷に道満が来た。
 「晴明!」
「道満…。」
「陰陽師寮のまとめ役のわたしを、呼び捨てとは!」
「これまでやってきたこと考えたら、当然の出迎えやと思うんやけど?」
「晴明!!
珱姫を出せ!!」
「出さへんよ!!
出したら、連れて行く気やろ?
無理やで!!」
「ふふふ…。
ははは…。
晴明!
お主に珱姫を守れぬ!
わたしが頂いて行こう。
珱姫。
何処に居られる?
珱姫!」
「屋敷に居るとは限らんやろ。
止めてくれへん?
珱姫、渡す気ないし。」
「ならば、力勝負といこうか。
わたしの式神とお主の式神。
どちらが強いかで勝負しよう。」
「ええよ。」
「ふふふ…。
ははは…。
お主の式神については、もう底が知れておる。」
「果たして、そうやろか?」
「試してみるがよい。」
「そうさせてもらうわ。」
 道満と晴明は、式神を出した。
 「ふふふ…。
ははは…。
いつもの4神か。
これで、わたしに勝てるとでも?」
「やってみんと分からんやろ?」
「ははは…。
結果は見えておる。
さぁ、来るが良い!」
「いくで。」
 一瞬だった。
 一瞬のうちに道満の式神が晴明の式神に破られていた。
 「な…何があったのだ…。
わたしの式神が…。」
「これに懲りたら、2度と珱姫の前に現れるな!!」
 この戦いをきっかけに、道満は陰陽師寮を出て、帝にも誰にも何も告げずに去って行った。
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