強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~
二、モテ男お断り

学生時代、バレンタインにはロッカーに入り切らないほどチョコをもらったとか、高校の時がピークでほぼ全校の女子から告白されたとか、ファンクラブがあったとか。

これらは我が社長、椿一静のモテ伝説である。これでもほんの一部らしく、酒の席になると武勇伝のように語られるモテエピソードは尽きない。
飲み会の度に聞かされすぎて私は半分…いやそれ以上は盛った話なのではと思っている。ただ、完全に嘘だとも思えないのが悔しいところ。なんせあの見た目だ。イケメンなのは揺るぎない事実であって、今現在会社で絶大な人気を誇る現実もある。その頃から頭も良かったのだろう。ハイスペック。ほんと、性格があんなじゃなきゃ尊敬と憧れの念を抱いただろうに。

「…芹澤、今絶対失礼なこと考えただろ」
「いいえ。 それより社長、2階ロビーの電球が切れているみたいです。替えのストックもないのでそれは発注するとして、とりあえず今から買いに行こうと思うのですが外出しても大丈夫ですか?」

まだ会社が小さかった頃の名残で、このくらいの買い物は今でも総務が直接出向くことが多い。それでも、外に大量発注が主になったからだいぶ楽だ。たまにの外出は良い息抜きにもなるしね。

「あぁ、すまんな。行ってきて……いや、それ俺も行く」

頷きかけたのを止めて社長はちらりと時計を見た。すっくと席を立ち、スーツを羽織り出す。
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