強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~
「もういいよ、一静さん。行こう。 じゃあね、湊。元気でね」

もう会うことはないだろうから。何より会いたくないから。その場を遠ざかってから社長の腕を離した。

「嘘はついてない」

社長は、今のが元彼だって気づいてる。だからあんなことを言ったのだ。

「いずれ彼氏にって、ずいぶん思い切りましたね」
「名前も呼んじゃったしな。却下されたのにな」

悪びれもなく社長が笑う。でもその顔が、真剣で、切なさを含むものになった。

「まだ忘れられないよな、さすがに。 おまえの心、今すぐジャックできればいいのに」

今のはヘンリーがソフィアへ向けて言ったセリフだ。映画のワンシーンを持ち出したのはわざと。社長の不器用で無骨な優しさが、今の私にはちょうどよかった。

「…だから影響されすぎですって」
「俺しばらくヘンリーに憧れるわ」

ははっと笑う社長が、今はただの自信家なモテ男に見えない。思わぬハプニングのせいだわ。元彼に心乱されて、それを正してくれたのが2度目だったから。早く立ち直って、社長に付け入る隙を与えないようにしなきゃ。
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