強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~
「前会った時に一緒にいた人、付き合ってるわけじゃないんだよね? だったらさ、また俺と付き合おうよ、もうあんなことしないって誓うから、だからさ、涼、俺と…!」
「名前で呼ばないで。私はもうあなたとそんな関係ではないし、戻りたくもないの」

冷たく響く自分の声。私、もう湊のことなんとも思ってないんだ。そうさせてくれたのが誰かなんて、分かりきっていた。

「どうして? どうしてそんなこと言うのさ、涼! 君は俺のことが好きだろ!?」
「昔の話です。それに、それを裏切ったのはあなたでしょう!」
「だからもうしないって言ってるじゃないか!」

湊はびっくりするぐらい1歩も引かない。それどころか、少しづつ近づく距離に若干の恐怖すら感じる。手首を掴まれて、私は睨むように言った。

「…今更何を言っても遅い。 私、仕事に戻るから。もうこんなことはやめて」
「待て、涼!」
「無理です! 私が好きなのはあなたじゃない!」
「え、…?」

湊が私の手首を掴んだまま信じられないとでも言いたげな声を上げた時。

「黙って聞いていれば。あんたは涼のなんなの? 気安く触るな。その名を呼ぶな」

すっと私の視界いっぱいに映ったのは、見慣れた広くて大きな背。
手の拘束も解放されて、代わりに庇うように抱き寄せられた。社長の安心する温度に、張り詰めていた気が緩む。

ハッとして湊が目を見開いた。
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