強引社長は才色兼備のOLにご執心 ~そのキス、どういうつもりですか?~

社長に頼まれた書類に不備を見つけたのは定時を過ぎた辺りだった。同僚はどんどん帰っていく。なかなか席を立たない私に「先輩帰らないんですか?」と視線をよこされたけれど、「あと少しだけやっておきたいことあって。瑠夏ちゃん帰って大丈夫だよ。お疲れ様」と返した。

期限が迫っているというほとでもないけれど、基本振られた仕事は早めに終わらせないと落ち着かない性分で、黙々と不備の修正を進めていたらオフィスには私一人になっていた。

社員どうしの連携をスムーズにとるために設置されたホワイトボードにはそれぞれの予定や動向を記していて、ちらりと見ると直帰や帰宅の札が並んでいる。社長も出先から直帰になっているし、完全に最後の私は施錠して出なければならない。

残りは来週片付けるとして、パソコンの電源を落とした時だった。
カバンに入れていたスマホが振動しているのに気がついて手に取ると、ディスプレイには彼氏の名前。湊(みなと)とは付き合って一年。ここ最近は湊の仕事が忙しいらしく中々会えていないが、電話をかけてくるということは仕事が落ち着いたのだろうか。久しぶりに会えるかも、と期待して電話に出ると、聞こえてきたのは予想とは違ってしょぼくれた元気の無い声。

『涼? 今いいかな…』
「大丈夫。ちょうど仕事が終わったところよ。 どうしたの?」

なんの疑いもなく、仕事で落ち込むこととかあったのかな?なんて呑気な自分を、次の瞬間恨めしく思うことになる。

『ごめん。俺、浮気した。 会社の後輩で…彼女、妊娠してるんだ』

驚いて言葉も出ない、とはこのことだろう。しばしの沈黙、私はバクバクと嫌に騒がしい心臓を落ち着けようと目を瞑る。
なんで?私のこと好きじゃなかったの?もしかして最近会ってくれなかったのは仕事じゃない?いつから…ずっと、私を騙していたの?

「…そう。そっか」
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