スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い

 ◇

 シュークリームを受け取りに、ノエルに足を踏み入れた柊登はすぐに違和感を覚えた。
 
(おかしい……)

 営業中にもかかわらず、店頭に誰も立っていない。
 店内は閑散としており、看板娘である結乃の声がどこからも聞こえなかった。
 柊登は床に落ちていた領収書を拾い上げた。
 柊登が支払う予定だった金額が書き込まれたそれは、よく見ると判子のインクが乾き切っていない。

「おーい、結乃。スイーツ王子はいつ取りに……」
 
 結乃を呼びながら、フラップ扉の向こうから呑気な貢がやってくる。手に持っているトレーには柊登が注文したシュークリームがのせられていた。
 
「あれ?スイーツ王子?」
 
 柊登と貢は互いに顔を見合わせた。
 
「結乃は?」
「それが、さっきから姿が見当たらなくて……」
「はあ!?結乃が何も言わずに店を放り出していくなんてありえねーよ!」

 鼻のいい柊登には誰が店にやってきたのか、すぐにわかった。
 兵頭から香った生ゴミと汗が混じった腐敗臭。同じものがノエルに残されていた。

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