このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 神官長はパチンと手をたたいた。それはもう、物事が進んで嬉しくてたまらないとでも言うかのように。
「聖女イリヤ様が、魔物討伐へ同行する。ですが、お子様がいらっしゃるということで、母子を離ればなれにするのはかわいそうだと。だからお子様のマリアンヌ様と夫である閣下も同行する。そんな流れでいきましょう」
 そのような台本で、周囲は納得できるのだろうか。それがイリヤには少々不安なところもあった。
「そうと決まれば、先にお披露目の儀ですね」
「お披露目の儀、ですか?」
 イリヤが声をあげると「そうです」と神官長は目尻を下げる。これはもう、嬉しくてたまらないといった様子にも見える。
「聖女様が現れたという話は、あっという間に広がります。ですが、そうなれば本当に現れたのか? 実在するのか? と不安になる者も出てきます。そのためにも、その姿をみなの前にお見せする必要があるのです」
 そういうものなの? という意味を込めて、クライブを見れば、彼はそういうものだと言わんばかりに大きく頷いた。
「では、我々は陛下と聖女様のお披露目の儀について話し合います。イリヤ嬢は、今日は、疲れたでしょう? 帰ってゆっくりとお休みください。今後は神殿にも足を運んでもらうようになりますが、それは閣下を通して連絡いたします」
 わざわざクライブを通すと発言したのは、彼が睨みをきかせていたからだ。彼がなぜこのような態度を取るのか、イリヤにはさっぱりわからない。
 神官長と魔法使いたちに挨拶をして、イリヤはクライブと共に部屋を後にする。マリアンヌはいつものライブラリーで遊んでいることだろう。イリヤがいないところで、暴れていないか心配になったが、そうなったときには誰かがすぐに呼びにくるはずだ。
 ライブラリーの扉の前で立ち止まると、マリアンヌのきゃっきゃとした楽しそうな声が聞こえてきた。
「失礼します」
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