三角関係勃発!? 寝取り上司の溺愛注意報
四章 ふたりの恋の行方の件➀
藤本に送られて自宅マンションに帰宅してから、沙耶はすぐに親友に電話で助言を求めた。今日会ったばかりだというのに、亜希子はいやがる素振りも見せずに親身になってくれる。
「亜希子~! 私、どうしよう! どうしたらいいの!?」
『どうしようも何も、告白にはイエスかノーかしか答えはないでしょうよ』
受話器の向こうの声はどことなく呆れている。まるで小学生の悩みだとでも言いたげな勢いだ。それでも尚樹以外とまともに付き合ったことのない沙耶にとってはおおごとだった。
「で、でも相手は上司だし、万が一仕事に支障が出ちゃったら――」
『尚樹くんだって同じ会社じゃない。しかも気持ち悪いことに、わざわざ彼氏を追いかけて同じ会社を受けたんだからさ』
「き、気持ち悪いとか言わないでよお……」
沙耶は若干傷ついてしまうも、よく考えたら彼氏を追って同じ会社に入るなんて、普通ではないのかもしれない。でもあのころは、そこまで尚樹が好きだったのである。尚樹しか生きる指標がなかったと言っても過言ではない。そこまで考えたところで、尚樹のことがいつの間にか過去形になっていることに沙耶は気づいた。
『実際、その、藤本課長? そのひとのことはどう思ってるわけ?』
亜希子の問いの答えは非常に明快だ。
「そりゃあ好きだよ。だって格好いいし優しいし、厳しい上司だってことを差し引いても完璧だもの」
『なんだ、とっくにわかってるんじゃない』
「え?」
眉根を寄せ、亜希子の次の言葉を待つ。
亜希子が溜息交じりに言った。
『藤本さんに恋してるんでしょう?』
「えっ、え……こ、恋!?」
自分のことながら“恋”という単語に戸惑ってしまう。
亜希子はやはり呆れていた。
『この期に及んで恋してないわけがないでしょうよ。尚樹くんに気持ちがなくなって、三角関係になったとき、きっと藤本さんのほうに惹かれたのよ』
「私が、課長に惹かれてる……?」
『そう』
電話口で亜希子がきっぱりと言う。
『ちゃんと直接向き合って、彼の告白に素直に答えてみたら?』
「亜希子……」
沙耶は藤本のことを思い起こす。あの泥酔した飲み会のあと、彼の家で目が覚めて青ざめたこと、それからすぐに好きだと言われ、なぜか溺愛されるようになったこと。よみがえるのは、そんな甘い記憶ばかりだ。それまでは確かに、普通の上司と部下だったのに。
「うん……うん、私、藤本課長と話してみる」
『そうしなよ。きっとうまくいくから』
「ありがとう」
『だから尚樹くんのことは忘れなさいね』
言われるまでもなく尚樹のことはすっかり頭の中から消えていたので、逆にそんなあっさりした自分に罪悪感を抱いてしまう。
「うん。それじゃあまた連絡するね」
電話を切り、沙耶は胸に手を当てて考えた。
(藤本課長はいつも私のためにいろいろしてくれた……その思いに、ちゃんと応えたい……!)
明日会社に行ったら、すぐに藤本を呼び出そうと心に決める。
正直、まだ藤本に恋しているかというとピンとこない自分がいた。けれどだからと言って、藤本が特別ではないかと問われれば、否と答えるだろう。
(私の素直な気持ちを伝えよう!)
たとえそれが藤本の希望する結果にはならなかったとしても、とにかく沙耶は真摯に彼に向き合いたいと思っていた。
「亜希子~! 私、どうしよう! どうしたらいいの!?」
『どうしようも何も、告白にはイエスかノーかしか答えはないでしょうよ』
受話器の向こうの声はどことなく呆れている。まるで小学生の悩みだとでも言いたげな勢いだ。それでも尚樹以外とまともに付き合ったことのない沙耶にとってはおおごとだった。
「で、でも相手は上司だし、万が一仕事に支障が出ちゃったら――」
『尚樹くんだって同じ会社じゃない。しかも気持ち悪いことに、わざわざ彼氏を追いかけて同じ会社を受けたんだからさ』
「き、気持ち悪いとか言わないでよお……」
沙耶は若干傷ついてしまうも、よく考えたら彼氏を追って同じ会社に入るなんて、普通ではないのかもしれない。でもあのころは、そこまで尚樹が好きだったのである。尚樹しか生きる指標がなかったと言っても過言ではない。そこまで考えたところで、尚樹のことがいつの間にか過去形になっていることに沙耶は気づいた。
『実際、その、藤本課長? そのひとのことはどう思ってるわけ?』
亜希子の問いの答えは非常に明快だ。
「そりゃあ好きだよ。だって格好いいし優しいし、厳しい上司だってことを差し引いても完璧だもの」
『なんだ、とっくにわかってるんじゃない』
「え?」
眉根を寄せ、亜希子の次の言葉を待つ。
亜希子が溜息交じりに言った。
『藤本さんに恋してるんでしょう?』
「えっ、え……こ、恋!?」
自分のことながら“恋”という単語に戸惑ってしまう。
亜希子はやはり呆れていた。
『この期に及んで恋してないわけがないでしょうよ。尚樹くんに気持ちがなくなって、三角関係になったとき、きっと藤本さんのほうに惹かれたのよ』
「私が、課長に惹かれてる……?」
『そう』
電話口で亜希子がきっぱりと言う。
『ちゃんと直接向き合って、彼の告白に素直に答えてみたら?』
「亜希子……」
沙耶は藤本のことを思い起こす。あの泥酔した飲み会のあと、彼の家で目が覚めて青ざめたこと、それからすぐに好きだと言われ、なぜか溺愛されるようになったこと。よみがえるのは、そんな甘い記憶ばかりだ。それまでは確かに、普通の上司と部下だったのに。
「うん……うん、私、藤本課長と話してみる」
『そうしなよ。きっとうまくいくから』
「ありがとう」
『だから尚樹くんのことは忘れなさいね』
言われるまでもなく尚樹のことはすっかり頭の中から消えていたので、逆にそんなあっさりした自分に罪悪感を抱いてしまう。
「うん。それじゃあまた連絡するね」
電話を切り、沙耶は胸に手を当てて考えた。
(藤本課長はいつも私のためにいろいろしてくれた……その思いに、ちゃんと応えたい……!)
明日会社に行ったら、すぐに藤本を呼び出そうと心に決める。
正直、まだ藤本に恋しているかというとピンとこない自分がいた。けれどだからと言って、藤本が特別ではないかと問われれば、否と答えるだろう。
(私の素直な気持ちを伝えよう!)
たとえそれが藤本の希望する結果にはならなかったとしても、とにかく沙耶は真摯に彼に向き合いたいと思っていた。