身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
一葉さんの言うことは、よく考えればもっともだと思う。



『闇夜の帝王』って呼ばれているだけあって、車内で待っているだけであんなに人が押し寄せてたもんね……。



もし、一葉さん本人が放課後の校門前に現れたら、生で見ようと押し寄せる生徒たちであふれて、さっきよりも大混乱になりそうだもんな……。



「日和。僕たちは昨日の集会所に行くけど、きみはどうする?」



「私はこのまま帰りたいんですけど……」



「わかった。場所は?」



聞かれて、とりあえず自宅マンションの近くのコンビニの店名を教える。



すると、一葉さんがそれを運転席側に伝えたとたん、私たち5人を乗せた車が走り出した。



それにしても……。



スモーク加工がほどこされた窓だから、外から見た車内の様子がわかりにくいとはいえ、いまだに大勢の生徒の注目を集めるのはやっぱり肩身が狭い。



でも、さっきのような無数の突き刺すような刺々しい視線を、全身に直接浴びるよりはよっぽどマシだ。



車が人通りの多い道から車道に出たところで、さっきまでの針のむしろに座るような気持ちが、痛みが引いていくように落ち着いていく。


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