王子様のお世話役を仰せつかっておりますが。〜おせっかい令嬢は、隣国王子に執着される〜
「ということで、クルト殿下はエスメラルダ城へ滞在なさるそうで。クルト殿下の留学中、私は学園でのお世話役を引き受ける事になりました」
「そうか……その、殿下の世話役というのは……リセで大丈夫なものだろうか?」
「お父様もそう思います……? 私もです」

 フォルクローレ伯爵家へ帰宅したリセは、休憩する間も無く父の書斎へと呼び出された。父は城での仔細について聞きたかったようだ。どうやらリセの帰宅を待つ間、気が気では無かったらしい。

「リセ、いいか。殿下には節度を持って接するのだぞ」
「ええ。分かってはいるのですが」

 令嬢としては、少々のびのびと育ちすぎたリセ。父もそのことを心配していた。礼儀作法などはひと通り身につけているが、気掛かりであるのはそこでは無い。

「相手はディアマンテ王国の第二王子なのだ、決して構い過ぎたり、振り回したりせぬように……わかるか、リセ」
「はい。承知いたしました」
「本当か……心配だ……」

 念押しをした後、まだ心配が拭い切れない父は、頭を抱えた。

 (信用されてないわね……)

 それもそのはず、リセには既に実績があった。何も知らなかったとはいえ、クルトを構い倒したという大きすぎる失態が。
 当時は七歳の子供同士であったから許された部分もあるのだろう。しかし今はお互いに十七歳。なにか粗相があっては、もしかすると国際問題に発展しかねない。



 リセは心に決めた。
 自身の中の『おせっかい』を封印すると。

 
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