【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
感情的に、激しく怒りを露わにする大地を、初めて見た。
憤りが、普段よりもハスキーな大地の声を、より一層かすれさせた。

「いまこの場に、『あいつ』を呼びだせたらいいんだけど……自分じゃどうにもできないなんてもどかしいよ……」
「その……もう一人のあんたは、まだ、あんたのなかに『居る』の……?」

いるよ、と、大地は乾いた声で答えた。小さく、息をつく。

「僕は……もう『僕』を、手放したくない。だけど……長い間『あいつ』が僕でいたせいで……『あいつ』も自分を、主張し始めているんだ。だから───」

私の手を握った大地の指に、震えが走った。

「薬……効いてきたみたいだ……。参ったな……まだ、まいさんと、いたい……のに……」
「大地……? なに? あんた、なに言って───」

言いかけた私の唇を、大地が(かす)めとる。
愛おしむようなくちづけは、ふいに、止んだ。

ドンッ……と。乱暴に突き飛ばされ、私はあっけにとられ、しりもちをついた状態で大地を見上げた。

汚らわしいものにでも触れたかのように、自らの唇を片手でぬぐい、大地が言った。

「……っ……。くそっ……なんで、こんな───。
おれに、二度と近づくな! とっとと、失せろっ!」

……私は、ふたたび『大地』を失ってしまった。
その時の私に解ったのは、それだけだった……。



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