【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
拒絶の向こう側

1.あたたかくて優しい慰め

残業が長引いたという父さんの帰りは、午前0時をまわっていた。
ネクタイをゆるめながら、玄関先で迎えた私を見上げる。

「……大地くんの様子は?」

期待半分の問いかけに、軽く首を振ってみせる。
父さんは、そうか、と肩を落とした。

「クリニックを変えた方が良いのかな。父さんの知り合いに、少しあたってみるか……」
「まだ二回目じゃない。こういうのって、信頼関係が大事だと思うし。もうちょっと、今の先生に預けてみた方が良いよ」
「そうか……そうだな。大地くんと長く一緒にいるお前が言うんだから、その方が良いんだろうな」

私の言葉にうなずく父さんの表情は、いつになく淋しげだった。

大地は父さんを避けるように、朝は遅くに起き、夜は早くに自室に戻るという生活を送っていた。

以前とは正反対の大地の態度に、父さんが気落ちするのも無理はなかった。
……実の娘より自分を気遣ってくれる『息子』ができたって、喜んでたのに。

「……どうしてもって時は、父さんに任せるから。だから、大地のこと、もう少し待っていてあげて。
ほら、今日は父さんの好きなサバの味噌煮にしたんだよ? 遅い時間だけど、食べてよね」

可哀想なくらい元気をなくした父さんの背を押し、ダイニングへと向かわせながら、大地の部屋のほうを振り返る。
……大地が出てくる気配は、なかった。
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