眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
痛みに震えながら美雨は訊ねた。大切なのは一つだけだった。
嶺人が絶句する。美雨の足を見て、それからぎゅっと手を握ってくれた。夏だというのにひどく冷たい手のひらだった。
『俺は無事だ。美雨が庇ってくれたから……そんなことより美雨の怪我を……!』
周囲から人々が集まってくる。救急車のサイレンが聞こえてくる。苦痛が神経を焼くようで、美雨の意識はだんだん遠くなってきた。それでも伝えたいことがあって、小さく唇を動かす。
『なんだ? よく聞こえない。頼むから死ぬな。美雨がいなくなったら、俺は――』
嶺人が祈るように呟いて、美雨の口元に耳を寄せる。彼の手が冷たいのは気になるけれどそれ以外は元気そうでホッと胸を撫で下ろす。心からの微笑みがこぼれた。
『嶺人くんが、無事でよかった』
それにどんな返事があったのか、意識が途絶えた美雨は知らない。
以来美雨の右足は思うように動かず、歩くには杖が欠かせなくなった。
加えて、この事故が岬グループの跡取りを巡る騒動によるものだと判明したのは、救急搬送先の病院で手術を受けた後のこと。
岬グループの正当な後継者は嫡男である嶺人と目されていた。だが嶺人の叔父が不倫相手との間に男子をもうけており、その子を担ぎ上げようとする一派がいたらしい。彼らは事故によって嶺人を亡き者としようとしたが失敗したのだと。
嶺人が絶句する。美雨の足を見て、それからぎゅっと手を握ってくれた。夏だというのにひどく冷たい手のひらだった。
『俺は無事だ。美雨が庇ってくれたから……そんなことより美雨の怪我を……!』
周囲から人々が集まってくる。救急車のサイレンが聞こえてくる。苦痛が神経を焼くようで、美雨の意識はだんだん遠くなってきた。それでも伝えたいことがあって、小さく唇を動かす。
『なんだ? よく聞こえない。頼むから死ぬな。美雨がいなくなったら、俺は――』
嶺人が祈るように呟いて、美雨の口元に耳を寄せる。彼の手が冷たいのは気になるけれどそれ以外は元気そうでホッと胸を撫で下ろす。心からの微笑みがこぼれた。
『嶺人くんが、無事でよかった』
それにどんな返事があったのか、意識が途絶えた美雨は知らない。
以来美雨の右足は思うように動かず、歩くには杖が欠かせなくなった。
加えて、この事故が岬グループの跡取りを巡る騒動によるものだと判明したのは、救急搬送先の病院で手術を受けた後のこと。
岬グループの正当な後継者は嫡男である嶺人と目されていた。だが嶺人の叔父が不倫相手との間に男子をもうけており、その子を担ぎ上げようとする一派がいたらしい。彼らは事故によって嶺人を亡き者としようとしたが失敗したのだと。