期待、するから
さっきの瑞稀の言葉が嘘だとして、何でそんな嘘をついたかなんて分からない。
でも、俺のことをからかうつもりでそう言ったんなら、それは失敗だ。
俺はこんなチャンスを逃せるほど、優しい人間ではないから。
それでも家に着いて、部屋までのこのこと着いてきた瑞稀に、不安が頭を擡げる。
そしてキスされそうになっても逃げないどころか、目を閉じてしまった瑞稀に、耐えられなくなったのは俺の方だった。
もう、ここまでされたら俺の負けだ。
瑞稀がからかってるのだとしたら、それはもう大成功だった。
……でも、もし。
からかってるわけではないのだとしたら。
そんな低い可能性、とどこかで笑う声がする。
それでも、瑞稀という人間を思えば、からかわれていることの方が違和感がある。
──なぁ、瑞稀。
俺は、期待しちまうぞ。
縋るように掴んだ手。
それがこの世で一番の幸せを引き寄せたことに気づくのは、もう間も無くのことだった。
〜fin〜


