人狼様と魔王の側近
ヴァイオレットの問いに三人は頷く。オリバーがチラリと後ろを見て言った。

「俺たち以外も気が付いたみたいだな」

五人の男性たちは起き上がり、「どこだここ?」と混乱している様子だった。オリバーとサクラが警戒した様子で近付き、杖を取り出して五人に向ける。

「貴様ら、何者だ?」

「あのダンスホールに奇妙な本を置いたのはあなたたちですか?返答によっては容赦しません」

「待って!」

青みがかった黒髪を持った男性が両手を広げ、残りの四人を守るかのようにオリバーとサクラの前に立つ。男性は辺りをグルリと見回した後、説明した。

「僕はクラル・ディスペア。魔王であり、剣術士であり、魔物使い。僕たちも謎の本に吸い込まれてここに来たんだ。人を失踪させる本のことを聞いて、これからカラミティにみんなで調査に行こうと思っていたんだけど……」

「カラミティ?」

ヴァイオレットは思わず首を傾げ、口にしていた。カラミティという地名はヴァイオレットが知る限り、存在しない。

「どこにそのカラミティという場所はあるんですか?アルストロメリア国やシャムロック国では聞いたことがありません」
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