海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜
その後、病院を出たその足で母子手帳を受け取って初めて、自分が妊婦だという実感が沸いた。
ドラマなどでしか見たことがなかった母子手帳に、先程病院で貰ったエコー写真を挟んだ。
説明を受けないと、これが赤ちゃんだと分からない程小さな丸のようなその存在、、それだけで堪らなく愛おしく思えて涙が出そうになった。
「─…凪砂、私たちの赤ちゃんだよ。可愛いよね、早く会いたいよねっ」
伝えられるはずのない思いを、空に向かって呟いた。寒い事を言うようだけど、空はどこまでも繋がっているし、風が私の声を凪砂へ届けてくれるかもしれない。
そんなロマンチックなことを本気で考えてしまうほど、私は浮かれていた。
そして、私がその報告を一番最初にした相手は、もちろん凪砂ではなく、自分の両親でもない。
【 やっぱり。とりあえずおめでとう、萩花。普通に嬉しいよ・・・マジ、おめでとう】
「──ありがとう、吉岡」
今日、いちばん迷惑を掛けた相手・・・そして今後一番迷惑をかけるであろう相手、、吉岡 颯斗。
【 いやぁ〜・・・これでやっとお前から店長の座を奪えるわ。お前結婚とは縁がなさそうだったからいつ退いてくれるかと思ってたけど、これで気分よく仕事出来るわ。】
ーーー・・・結婚
未婚で子どもを産む事になる、、っと告げるほど私と吉岡は親しい間柄ではない。
「まぁ、吉岡が店長やってくれるなら私は安心して任せられる。とりあえず産休ギリギリまでは働くから、迷惑かけると思うけど・・・よろしくお願いします」
結婚については触れず、素直に頼み込んだ。情けないが今仕事のことで一番頼れるのはこの男しかいない。
【 あぁ、店のことは任せろ。それよりお前、少しでも身体辛い時は言えよ?お前が張り切って無理したら、今後妊婦で働く奴が出てきた時にプレッシャーになるからな。そういうこと、ちゃんと考えて行動しろ。これは"店長命令"だ】
さっそく職権乱用している吉岡に呆れたけど、言ってることは正しいので素直に承諾した。