元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
「さて」
私の告白に満足したらしい飛鳥は、さっと立ち上がる。するとなぜか、扉の前を通り過ぎ、先程まで冬梧さんが座っていた場所に腰掛けた。
「食うか。飯に罪はねーし」
確かに、高級な料亭だ。食べたら新商品開発のヒントになるかもしれない。そう思っていると、飛鳥は早速お刺身に箸を伸ばしていた。
「しっかしアイツ阿呆だよな」
飛鳥は冬梧さんが置いていった特許原簿をちらりと見た。私もそちらを見る。飛鳥は一度箸を置き、紙のとある部分を指差した。
「ここ、しっかり見ろよな」
飛鳥の指の先に書かれていたのは、まだ父母が生きていた日付だ。意味が分からないので、飛鳥の方を向いた。
「特許権には、期限がある。この薬の特許が切れるのは、来月末だ」
「じゃあ、私と婚約したところで――」
「ああ、意味はないな。アイツは、この薬の特許権を独占するっつー手柄立てたかったんだろうけど、それも意味なしってわけだ。再来月には、特許期間切れでジェネリックが出回る」
特許取得日から二十年を過ぎれば特許は切れ、どの製薬会社でも同じ薬を作ることができる。それがいわゆるジェネリック――後発医薬品なのだと、飛鳥は教えてくれた。
「だからうちから人員送ったんだよ。駆け出しの剣崎酒造の製薬部門で、ジェネリックの開発が一番に進むように」
「へぇ」
「っつーわけで、そっちに走り回ってたらお前の相手なかなかしてやれなかった。寂しい思いさせたな」
「別に寂しくなんて!」
思わず声が大きくなってしまう。飛鳥はケラケラ笑いながら、「でも俺のこと好きなんだろ?」と自信満々に笑う。
なんだかそれにイラッとして、私はさっさと箸を進めた。冷めてしまったけれどどれも絶品に感じたのは、飛鳥が一緒にいたからかもしれない。
私の告白に満足したらしい飛鳥は、さっと立ち上がる。するとなぜか、扉の前を通り過ぎ、先程まで冬梧さんが座っていた場所に腰掛けた。
「食うか。飯に罪はねーし」
確かに、高級な料亭だ。食べたら新商品開発のヒントになるかもしれない。そう思っていると、飛鳥は早速お刺身に箸を伸ばしていた。
「しっかしアイツ阿呆だよな」
飛鳥は冬梧さんが置いていった特許原簿をちらりと見た。私もそちらを見る。飛鳥は一度箸を置き、紙のとある部分を指差した。
「ここ、しっかり見ろよな」
飛鳥の指の先に書かれていたのは、まだ父母が生きていた日付だ。意味が分からないので、飛鳥の方を向いた。
「特許権には、期限がある。この薬の特許が切れるのは、来月末だ」
「じゃあ、私と婚約したところで――」
「ああ、意味はないな。アイツは、この薬の特許権を独占するっつー手柄立てたかったんだろうけど、それも意味なしってわけだ。再来月には、特許期間切れでジェネリックが出回る」
特許取得日から二十年を過ぎれば特許は切れ、どの製薬会社でも同じ薬を作ることができる。それがいわゆるジェネリック――後発医薬品なのだと、飛鳥は教えてくれた。
「だからうちから人員送ったんだよ。駆け出しの剣崎酒造の製薬部門で、ジェネリックの開発が一番に進むように」
「へぇ」
「っつーわけで、そっちに走り回ってたらお前の相手なかなかしてやれなかった。寂しい思いさせたな」
「別に寂しくなんて!」
思わず声が大きくなってしまう。飛鳥はケラケラ笑いながら、「でも俺のこと好きなんだろ?」と自信満々に笑う。
なんだかそれにイラッとして、私はさっさと箸を進めた。冷めてしまったけれどどれも絶品に感じたのは、飛鳥が一緒にいたからかもしれない。