元令嬢は俺様御曹司に牙を剥く 〜最悪な運命の相手に執着されていたようです〜
 料亭の個室に二人きり。しかも、飛鳥が隣にぴたりとくっついている。目の前には、まだ手につけられていない料理たち。

 気まずい。ものすごく、気まずい。

 黙っていると、飛鳥が口火を切った。

「お前、いつの間にあんなに俺のこと好きだったんだよ」
「知らない! っていうか飛鳥、いつから聞いてたの!?」
「お前が『騙されてるってどういうこと!?』って、アイツにつっかかってたとこから」

 それって、つまり、全部だ。

「だったら何で早く来てくれなかったの!?」
「アイツの魂胆知りたかったし。一人だったから、手荒なことはしねーだろうなと思ってたし。あとは――」

 飛鳥は私に、ニヤリと笑った。

「――お前の告白、聞きたかったし?」
「もう! あれは忘れて!」
「忘れるわけねーだろ。忘れろって言うなら――」

 飛鳥の手が、私の顎をくいっとすくい上げた。間近で目が合う。その強気な瞳にかっちりと捉えられてしまい、逃げ出せなくなる。

「――今、ここで、本人に告白すること」

 顔中が火を吹いているように熱い。恥ずかしすぎて、勝手に涙が溢れそうになる。

「す……」
「す?」
「好きだよ、バカっ!」

 勢いで言えば、口は飛鳥の柔らかい唇に塞がれてしまった。
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