好きを極めた乙女の駆け引き
なにも言わないでいると、安心院くんは話しはじめた。
「学校の裏に神社があるの知ってる? 四月一日神社。4月1日って書いて『わたぬき』って読むだって」
「読み方は知ってるけど、そんな近くに神社があったんだ」
「生い茂ってて、まあ注意してなきゃふつうに見逃すな、あれは。そこで俺はこの前、お願いをしてみた」
「神社で願うタイプなんだ」
「いや、いつもはしない。受験のときですら神さまに『ご苦労さま』を言うのが俺だよ」
イメージどおりだ。
「ちょっとした実験のつもりかな。ほとんど信じてなかった。内容が内容だからなあ」
「なんて願ったの?」
安心院くんは当時を再現するように、顔の前で両手を合わせた。
「〝好きな子の言ってることと思ってることを逆にしてください〟」
そう言って手を離すと、こっちを見て小さく口角を上げた。
「ほんとに実験だった。いつも争ってばっかのその子が、本当はどう思ってるのか知りたかっただけ」
安心院くんは床に手をついて、背中を少しだけ後ろに傾け、天井を見上げた。