その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜


「うーん……」

家に帰った私は、スマホで碇ビールの社員用サイトとにらめっこしていた。
彼に見せられたコンペのページを、もう一時間以上も眺め続けている。
ずっと憧れていた商品企画。
スーシでもそういう機会が無かったわけではないけど、とにかく日陰の身のように目立たないようにしていたから、企画に参加することも避けていた。
ましてや碇ビールほどの大手の商品だなんて、選ばれたら一気に夢が叶ってしまう。
「企画書なんて書いたことないし、企画のプレゼンなんかもしたことがないけど」
募集要項には『企画の内容(斬新さや時代性など)を最重要ポイントとして審査する』とある。
つまり、素人にもチャンスがあるということだ。

『君には企画のセンスがある。企画職を目指すといい』

「……ま、参加するのはタダだし」

挑戦してみようと決めた。

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