その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜
「随分と冷たい態度だな」
大きな手に肩を掴まれたまま、先ほどよりも近い距離で見つめられる。
心臓がドクドクと不安な音を鳴らしてる。
「冷たいって言われても……」
久しぶりに向けられる鋭い眼差しがなんとなく怖くて、肩に触れる手からの熱を感じながら目を逸らす。
「助けていただいたのは感謝してますけど、私たちはもう……」
彼は私の顎をクイッと上げて、自分の方に向かせる。
「もう、何?」
強引な行動にムッとする。
「終わっ——」

強引なまま唇を奪われる。
遠慮なんてまるで無く、はじめから私の口内を熱が侵すようなキス。

「ん…っふ——っ」
強引さとはギャップのある、数年ぶりの甘美な刺激に蕩けてしまいそうになる。
曖昧になりかけた思考で必死に抗って、彼の身体をグイッと押し退ける。

「とっくに終わってるでしょ!?」

そう言った私の身体が、今度はベッドに押し倒される。
「やっと見つけたんだ。終わったなんて言わせない」
怒りすら孕んだような、真剣な目。
「言わせないって——」
「——まあいい。こうして再会できたんだ」
彼の目に、私が映ってる。

「終わったのなら、また始めればいい」
この人は、何を言っているんだろう。

碇成貴——もう二度と会わないと思っていたのに。
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