らくがきと恋心
「あ、」
思わずこぼれた声。
拾い上げたノートをパラパラとめくったハッシュの人は、「アンタのノート?」とひと言。
人のノートを勝手に見ないでほしい…。
「…はい」
私が返事をすると、彼はもう一度ノートに視線を移したあと、ふっと笑ってパタンと閉じた。
たしかに数学は苦手だから、ノートのとり方は人に見せられるような物じゃないけど。
笑わなくても。
やっぱり、性格わるい。
差し出されたノート。
私が手に取ると、ハッシュの人は言った。
「何だっけ?購買のおすすめは、焼きそばパン?」
真っ黒な瞳に、キョトンとした私が映った。