16歳年下の恋人は、そう甘くはなかった

雄太郎の計略

深夜の誰もいないオフィスで、雄太郎は神妙な面持ちでデスクトップの画面を見つめている。

キミコと結婚して十五年。中学生の一人息子と三人暮らし、外からは夫婦仲は至って良好に見えているだろう。
セックスレスの期間は息子の年齢と同じだが。
雄太郎は、まだまだ衰えない性欲のはけ口として、マッチングアプリを利用している。
そこで知り合った40代と30代の人妻との定期的な情事で発散しているところだ。

妻の方は、自分の見立てでは、そういったこととは縁がなさそうだ。
昔から不器用な女だった。

しかし、二か月前から明らかに様子が変わった。
これまでスポーツには全く興味を持たなかった妻が、バスケの試合を録画までして観ている。
別に推し活を咎める気はない。
しかし、最近は、心ここにあらず、という様子をよく目にするし、家事も明らかに手抜きが目立ってきた。
試合を観に行った日は、夕食が総菜になっているし、風呂を沸かすのを忘れていた、なんてことも二度ほどあった。

それでも、そこまでならまだ黙認できた。が…。

雄太郎は妻の日記を読んだ。
結婚する前から日記をつけているのは知っていたが、それに触れるのは初めてのことだった。

そこには、深瀬への異常なまでの執着が生々しく表現されていて、実際に彼と二人で会ったことが書かれていた。
驚いたことに、そこには二人の睦み事の詳細まで記されていた。
文面からして若干の妄想が含まれている気配はあったが、自分にさえそれほどまでの愛情や執着を見せたことがない彼女が、これほど別の男に熱をあげるのを見るのは気分が悪かった。

妻の”推し”を、持てる手段を使って調べていたが、ここにきて、なかなか興味深いことに遭遇している。

「仲宗根マヤ」

その名前は確かに覚えがある。同姓同名も考えられるが、居住地が大阪、年齢も同じ。
写真だけはどうしても入手できなかったが、多分間違いない。

来週はちょうど大阪出張だ。たまっている有給も使って、ちょっくら遊んでくるか。
雄太郎は買ってきたコンビニのクリームパンを齧りながら、マウスをクリックし、マップを広げていた。
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