【漫画シナリオ】小崎くんは川村さんを好きすぎている

16 小崎くんと波乱の体育祭



⚪︎場所:校庭

体育祭本番。
他校の生徒や一般の来場者でワイワイと賑わう情景。

アナウンス『それではこれより、第六十五回、体育大会を開催いたします!』

→盛り上がる。

〈時間経過の描写と共に各種目のダイジェスト〉

・徒競走
・玉入れ
・ムカデ競走 etc…

ムカデ競走であみりや樹たちが派手に転んでたり、
間宮と佐々木が二人三脚で一着だったり、
加賀が仮装リレーでメイド服着てたり、
結莉乃が玉入れがんばってたり、
高城さんが旗振って気合い入れて応援してたり。

〈ダイジェストおわり〉

結莉乃は救護係の腕章をつけて、救護テント付近にいる。
※怪我人などが出たら保健室に連れていく係。
※小崎は応援団員なので、団のテント前でメガホン持って盛り上げる系の係。

結莉乃が救護テントの中でボーっとしていると、その場に佐々木がやってくる。

佐々木「川村さーん、お疲れー! 玉入れめっちゃ頑張ってたね〜!」
結莉乃「あ、お疲れ様。佐々木さんも、二人三脚速かったね! 間宮さんと息ぴったり!」
佐々木「ふっふ〜。まあね〜!」

競技の結果について談笑。
やがて佐々木がこそりと耳打ち。

佐々木「ねえねえ川村さん、小崎くん、次の障害物競走出るみたいだよ〜」
結莉乃「え!?」

小崎の名前を聞いた途端にドキリとして頬が赤らむ。
→佐々木はにっこり。

佐々木「ふふっ、よりによって障害物競走なんてね! イケメンがやる競技にぴったりじゃーん、飴食いもあるし」
結莉乃「そ、そうだね。顔とか真っ白になるのかな、ちょっと見たいかも……」

※飴食い=片栗粉の中に顔を突っ込んで、入ってる飴を探す競技。

結莉乃はそわそわしつつ、佐々木に手を引かれて飴食い競走を見にいく。
→競技自体が大盛り上がり。

ついに小崎の番になると、女子から黄色い歓声が上がる。

佐々木「うわーお、普段の二倍増しで大歓声だねえ」
結莉乃「他校からも人気って、ほんとだったんだ……」
佐々木「負けてらんないよ川村さんっ、私らも小崎くん応援しよ!」
結莉乃(小崎くん、一応敵チームなんだけど……まあいっか)

微笑み、小崎のレースを見守る。

結莉乃「こ、小崎くんがんばれ!」

控えめに声を張ると、結莉乃に気づいたのか目が合う小崎。
→結莉乃に向かってピースする。

佐々木「あっ、気づいた! さっすが〜!」
結莉乃「余裕そうだ……」

アナウンス『位置について、よーい、どん!』

一斉にスタート。

最初は平均台。
カッと目が光る小崎。

小崎「これは川村さんへと続く愛の架け橋だーーッ!」
→全力ダッシュ。

アナウンス『お〜っと小崎くん、カノジョへの愛を叫びながらダッシュで平均台一位通過ー!』
結莉乃「ちょっとぉぉ!?」
→結莉乃顔真っ赤。

次は縄跳び。

小崎「俺は川村さんのためなら翼がなくてもどこまででも飛べるぜッ!!」
→二重跳びとハヤブサ跳びしまくる。

アナウンス『普通跳びでいいんですよ小崎くーん』

次がダンボールの中に入って転がるやつ。

小崎「川村さんに踏まれて走る馬車馬になりたいッ!!!」
→全力でゴロゴロ。

アナウンス『欲望は胸の中にしまっといてくださーい』

次が飴食い。

小崎「ウオオオオ!! 川村さんどこだァ!!」
→躊躇なく片栗粉に顔面突っ込んで飴探し。

アナウンス『そこに川村さんいませーん』
結莉乃(恥ずかしすぎる、もう勘弁して)

小崎、最終的にぶっちぎりの一位でゴール。

アナウンス『愛の力の大勝利! 黒団・小崎くんが一着でゴールです! リア充爆発しろ!』

→真っ白な顔のまま結莉乃に向かって笑顔でダブルピース。
→外野から「ヒュ〜!」「カノジョ持ち滅べー!」などヤジが飛ぶ。

結莉乃は真っ赤な顔で小崎を睨んでいたが、その片栗粉で真っ白になった顔を見てじわじわ頬が緩み、つい吹き出す。

結莉乃「……ぷっ、あははっ! もー、ほんとめちゃくちゃだけど、意外と似合う」
佐々木「元がイケメンだと顔が白くてもイケメンだね〜」
結莉乃「ふふっ、そうかも。……かっこよかった」

結莉乃はどこか満足げ。
→佐々木はニヤニヤ。

佐々木「まあでも、お待ちかねは午後の応援団演舞だよ。メイクアップ小崎くん楽しみ〜」
結莉乃「うん、そうだね! 楽しみにしとこう!」

佐々木と談笑しながらテントへ戻る結莉乃。
するとその時、他校の女子から声をかけられる。

他校女子A「ねえねえ、あなた川村さん?」
結莉乃「え……」

振り返ると、近隣の女子校の生徒が複数。
結莉乃は警戒してたじろぐ。
佐々木も警戒。

他校女子B「ちょっとー、どしたの?」
他校女子C「この子誰? 知り合い?」
他校女子A「いや、この子、さっき小崎くんが叫んでたカノジョだって」
一同「えー! マジ!?」

その場がざわつき、結莉乃と佐々木が囲まれる。

女子B「どっち? 右の子?」
女子A「違う、左」
女子B「えー、こっち? へえー」
女子C「小動物感あるねー。かわいー」
女子A「ねえねえ、どうやって小崎くん落としたの?」

次々と話しかけられ、結莉乃が狼狽えていると、佐々木が前に出る。

佐々木「ごめんなさーい、私たち今から競技の準備があるのでっ!」
女子たち「あっ、ちょっと!」

結莉乃を連れてその場を離れる。
→テントまで戻ってきて一息。

佐々木「ふー、危ない危ない。肉食女たちの餌食になるとこだったよー」
結莉乃「あ、ありがとう、佐々木さん」
佐々木「ふふっ、言ったでしょ、私らが川村さん守るって! しかしさっきのは目立ちすぎたね、小崎くんったら暴走しすぎ〜」
結莉乃「あはは……まったくだよ……」

苦笑していると、メガホンで次の競技の招集がかかる。
→佐々木が結莉乃の手を離す。

佐々木「あ、そろそろまた出番だ。行かなきゃ」
結莉乃「そっか、がんばってね!」
佐々木「うん! 行ってくる〜!」

離れていく佐々木。
手を振って見送る結莉乃。

そんな結莉乃の姿を見ながら、遠くのテントでこそこそと生徒たちが声をひそめる。

〈以下、ひそひそ声〉

「ねえ、さっきの小崎くんの障害物競走見た?」
「めちゃくちゃ川村さんのこと叫んでたね」
「小崎くん、川村さんのこと好きすぎるでしょ〜」
「やっぱりさあ、あの噂って嘘なんじゃない?」
「あー、七組の女子が騒いでたアレね」
「何だっけ、実はあの二人って付き合ってなくて、川村さんが小崎くんをたぶらかしてるだけってやつ?」

「川村さんが実は男癖悪いって噂でしょ」
「いやいや、さすがに嘘だって〜」
「でもさ、これ聞いた話なんだけど、夏休みに川村さんが別の男子と二人きりでコンビニにいたの見たってヤツがいてさ」
「あー、それ私も聞いたことある! あの人でしょ!」

「一組の加賀麟太郎!」

〈ひそひそ話おわり〉


⚪︎場面転換:借り物競争

──パンッ!(ピストルの音)
→借り物競争にて出走した加賀のアップ。

アナウンス『さあ、一斉にスタートしました! 二年生の借り物競争!』
『ボードに書かれたものを見つけ出し、最初にゴールするのはいったいどこの団なのでしょうか!』

出場者がそれぞれボードをめくり、マイクを使って呼びかける。
→『帽子かぶってる人』とか、『先生』とか。

加賀もボードをめくる。
しかし、それを見て一瞬息をのむ。
やがて目を細め、マイクを手に取り、スッと息を吸い込んだ加賀が告げる。

加賀『……二年二組の川村結莉乃さん。来てください』

その呼びかけを聞き、目を見開く小崎。(水道で顔を洗ってた)
結莉乃もテントの中で目を丸める。

結莉乃「……へ? 私?」
加賀『おい、川村結莉乃。聞こえてんだろ。来い』
高城「何してるんですか川村さん! 早く行ってください! 他の団に追い越されちゃうでしょ!」
結莉乃「えっ、え!? は、はい!」

加賀も結莉乃と同じ白団(※一組、二組が同じ団)のため、勝負事に熱い高城に急かされて強引に押し出される。
→顔を洗って粉を落とした小崎は、顔を濡らしたまま慌てて競技を見に走る。(焦燥感がある表情)

周囲はざわざわ。
結莉乃はわけもわからないまま、おずおずと加賀の元へ。

結莉乃「あ、あの、なんで私が……」
加賀「いいから来いよ」

手を引かれ、走り出す二人。
結莉乃を連れたままゴールした加賀は、実行委員の生徒にボードを渡す。

アナウンス『一位は白団の加賀くん! ボードに書かれていたお題は……〝何か伝えたいことがある人〟でーす!』
結莉乃(伝えたいこと……? 私に?)
アナウンス『それでは、さっそく伝えていただきましょう! さあ加賀くん、遠慮なくどうぞー!』

実行委員にマイクを渡される加賀。
結莉乃は困惑した表情。
加賀は真剣に結莉乃を見つめ、言い放つ。


加賀『──お前と小崎翠は、嘘の恋人同士だ』


結莉乃と小崎の胸がドクリと重く跳ね、目を見開く。
周囲の表情も凍りつく。
加賀は表情ひとつ変えない。

加賀『お前は、本当は小崎と愛し合ってなんかいない。お前が強引に小崎から迫られて、断りきれずにアイツの恋人になることを承諾したんだ。そうだよな』
結莉乃「え……っ、ちょっと……!」
加賀『そんなんでいいのか? 気弱な性格に付け込まれて、半強制的に恋人にさせられて。お前が嫌がっても、言葉巧みに騙されて、無理やり脅されて、仕方なく請け負ったんだろ』
結莉乃「そ、そんな……っ! 違う、そこまでじゃないよ!」
加賀『ふーん? 〝そこまでじゃない〟ってことは、ある程度はこの話が事実に近いってことになる。じゃあ、嘘の恋人同士なのは少なくとも事実なんじゃないか?』

言葉巧みに誘導尋問され、青ざめる結莉乃。
ざわめく生徒たち。
小崎は歯噛みする。

小崎「アイツ、ふざけやがって……!」
生徒A「ちょっと、小崎くん! 今の話ほんと!?」
小崎「……っ!」
生徒B「川村さんと付き合ってないって噂は聞いたけど、あれマジなの!?」
生徒C「おいおいマジかよ、じゃあさっきの障害物競走のアレも、ただのパフォーマンス?」
生徒D「うわー、モテる男はやることが違うね」
生徒E「もしかして、川村さんって脅されて付き合わされてただけ? やば」
生徒F「確かに川村さんから小崎にアピールしてるとこなんか見たことないかも……」

小崎のことを心配する声や、どこか冷めた声、軽蔑した声も入り交じる。
小崎は否定しようとするが、何か言い出す前に加賀の声が続く。

加賀『もういいだろ、結莉乃。小崎と別れろよ。いい加減、お前は解放されるべきだ』
結莉乃「……っ、ま、待ってよ、誤解しないで! 私たちはそんなんじゃ──」
加賀『俺はお前が好きだよ』

結莉乃が加賀を止めようとしたところで、突然加賀が結莉乃に告白。
結莉乃は硬直、小崎も愕然とする。

加賀『小崎と別れて、俺と付き合おう、結莉乃。返事はすぐじゃなくていい』
『……俺の伝えたいことは以上です』

マイクを返す加賀。
→結莉乃は驚いて何も言えない。
マイクを返された実行委員の生徒は頬を引きつらせ、どうにか空気を和ます。

アナウンス『あ、ありがとうございました〜! 衝撃の告白でしたね〜! それでは次の方、ボードを見てみましょう〜!』

それとなく流して競技のアナウンスを再開。
→加賀は着位順の列へ。
→結莉乃は呆然としたまま解放。

その様子を遠くのテントから見物している双葉。
→神妙な表情で見つめる。

双葉「うーわ、どうすんのよコレ」


第16話/終わり
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