もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
「座ったままで、立って移動しなくていいんですね」
「うん、最近導入したんだけど、とっても好評でね」

 椅子の動きが止まり、高く上がった後、ゆっくり背が倒れていく。
 最終的には、ほとんどフラットな状態になった。

「じゃあ、はじめるから」
 突然、耳のそばで声がして、そのとたん、心拍数がはね上がる。

 顔の上にタオルが優しくかぶせられる。
 ただ、ふわりと目の上に置かれているだけなのに、視界が遮られたことでそれ以外の感覚が敏感になってゆく気がする。

 すぐにシャワーが水音を響かせ、額から濡らされてゆく。

 メイクをされたときもドキドキしたけれど、シャンプーのほうがさらに接近感が半端ない。
 今、心電図を取ったら、確実に再検査になりそうだ。

 シャワーが止まり、棚の扉の開く音がする。

 絶え間なく流れていた水音がなくなると、とたんに心配になった。
 玲伊さんがこの心音に気付いてしまうのではないかと。

 続いて、柑橘系のすっとした香りが立ち上り、鼻腔をくすぐった。

 嗅いだとたん、気持ちが落ち着くような心地よい香り。
 ドラックストアの安売りで買ったシャンプーの人工的な香りとは、まるっきり別物だ。

< 114 / 277 >

この作品をシェア

pagetop