もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 彼女は、わたしのほうにちらっと視線を向け軽く会釈すると「じゃあね」と言って、連れが待つ席に戻っていった。

 玲伊って呼び捨てにしていた。
 とても親密な感じがしたけれど……
 
 わたしはつい、聞いてしまう。
「玲伊さんのお客様ですか?」

 彼はうん、と頷いた。
「お客でもあるけど、前からの知り合いでもある。アパレルメーカーの『AnnieK』のプレスでさ。カタログ撮影のとき、うちにヘアメイクを依頼してくれてるんだ」

「とっても素敵な人ですね」
「あれで子供が二人いるんだよ、彼女」
「え、ぜんぜん見えなかった」

 お子さんがいるとは、まったく思わなかった。
 心は正直なもので、それを知ってほっとしている自分がいた。
 
 でも、玲伊さんのそばにいて似合うのは、やっぱり、彼女や笹岡さんみたいな人だなと改めて思う。

 わたしみたいな平凡を絵に描いたような人間でないことは、とにかく明らかなことだ。

 玲伊さんと一緒に食事をしているんだ、という体が浮き上がってしまいそうなほど浮かれていた気持ちが、シューっと音を立てて(しぼ)んでいった。
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