もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 そうこうするうちに注文したお肉が運ばれてきた。

 せっかく連れてきてもらったのに、沈んだ顔なんて見せてはいけない。

 わたしはありったけの元気を体中からかき集めて、笑顔を作った。

「わー、美味しそう」
「よし。食おう」

 わたしは本当に食いしん坊で、会社が辛かった時期も、食欲だけはちゃんとあった。
 そのことが鈍感さを示しているようで恥ずかしかったけれど、おかげでどん底まで落ち込まずに済んだのだと、今は思っている。

 玲伊さんがどんどんお肉を焼いてくれるので、勧められるままに随分たくさん食べた。

 お肉だけでなく、キムチもクッパも、そして締めの石焼ビビンバもとっても美味しかった。
 
「うまかったな」
「はい。もう大満足でした。しばらくお肉食べなくても平気です」
「じゃあ、連れてきた甲斐があったよ」

 ふたりで店を出て、そこでわたしは頭を下げた。
 もちろん、ここで別れるつもりで。

「今日はごちそうさまでした。おいしかったです。もうお腹いっぱいです」

「そう? もう一軒行こうと思ってるんだけど?」

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