【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~
(あ、この本……)
新しく借りる本を選んでいたオティリエはふと、とある書棚で足を止めた。小説が集められた棚だ。そのうちの一つのタイトルに見覚えがあり、オティリエはそっと手にとってみる。
(『いつか王子様が』だわ)
それは数年前、オティリエがまだ幼い頃に人気を博したベストセラー本だった。当時は相当な人気で、オティリエが部屋から出る度に、侍女や使用人たちが本の内容を噂したり、心のなかで本の内容を思い描いていたほどだ。オティリエ自身は読んだことはないものの、なんだか妙な親近感がある。
(こんなふうに実物を手に取れる日が来るなんて、あの頃は思いもしなかったなぁ)
他人の心の声に怯え、生きるだけで精一杯だったオティリエからすれば、こうして今、実家を出て城にいることは奇跡のようだ。加えて、ゆっくりと本を読むだけの心の余裕を持てているのだから、本当に恵まれている。
オティリエはその場でパラパラとページをめくり、内容をざっと流し読んだ。自室に持ち帰ってゆっくり読むべきだとわかっているが、続きが気になってたまらない。
そうしてしばらく読み進め、とあるページに差し掛かったところでオティリエは静かに手を止める。そこにはヒロインと王子様が出会うシーンが描かれていた。
「あっ『いつか王子様が』だね。懐かしいな」
とそのとき、背後からそんな声が聞こえてきて、オティリエは思わず素っ頓狂な声を上げる。振り返ると、そこにはヴァーリックがいた。
「ヴァーリック様!? どうしてここに?」
「今日は休日だろう? 僕もたまには読書をしようかなぁと思って」
そう言ったあと、ヴァーリックは周囲をそっと見回しながらオティリエを見つめる。
【本音を言うと、ここに来ればオティリエに会えるかなって思ったんだよね】
茶目っ気たっぷりな笑顔。オティリエはドキッとしつつ「そうだったんですね」とこたえた。
新しく借りる本を選んでいたオティリエはふと、とある書棚で足を止めた。小説が集められた棚だ。そのうちの一つのタイトルに見覚えがあり、オティリエはそっと手にとってみる。
(『いつか王子様が』だわ)
それは数年前、オティリエがまだ幼い頃に人気を博したベストセラー本だった。当時は相当な人気で、オティリエが部屋から出る度に、侍女や使用人たちが本の内容を噂したり、心のなかで本の内容を思い描いていたほどだ。オティリエ自身は読んだことはないものの、なんだか妙な親近感がある。
(こんなふうに実物を手に取れる日が来るなんて、あの頃は思いもしなかったなぁ)
他人の心の声に怯え、生きるだけで精一杯だったオティリエからすれば、こうして今、実家を出て城にいることは奇跡のようだ。加えて、ゆっくりと本を読むだけの心の余裕を持てているのだから、本当に恵まれている。
オティリエはその場でパラパラとページをめくり、内容をざっと流し読んだ。自室に持ち帰ってゆっくり読むべきだとわかっているが、続きが気になってたまらない。
そうしてしばらく読み進め、とあるページに差し掛かったところでオティリエは静かに手を止める。そこにはヒロインと王子様が出会うシーンが描かれていた。
「あっ『いつか王子様が』だね。懐かしいな」
とそのとき、背後からそんな声が聞こえてきて、オティリエは思わず素っ頓狂な声を上げる。振り返ると、そこにはヴァーリックがいた。
「ヴァーリック様!? どうしてここに?」
「今日は休日だろう? 僕もたまには読書をしようかなぁと思って」
そう言ったあと、ヴァーリックは周囲をそっと見回しながらオティリエを見つめる。
【本音を言うと、ここに来ればオティリエに会えるかなって思ったんだよね】
茶目っ気たっぷりな笑顔。オティリエはドキッとしつつ「そうだったんですね」とこたえた。