【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~
「そんな……! 駄目ですよ。早くお休みにならないと。私の部屋まで送っていただいたら、時間をロスしてしまいます」

「平気だよ。僕だって本当は執務室に残ってみんなと仕事がしたいんだ。だけど、エアニーが頑として譲らないってわかっているから、仕方なく部屋に戻るだけだし」

「だとしても、そんなことはさせられません。私はひとりで平気ですから」


 失礼にあたるとわかりつつも、オティリエは返事をしながら私室の方向に向かって小走りをする。けれど、ヴァーリックは逃さないとばかりに、オティリエの後を追ってきた。


「いくら城内とはいえ、こんな時間に女の子一人じゃ危ないだろう? というか、僕はオティリエが心配なんだ」

「で、でしたら、騎士を一人つけていただければそれで……」

「嫌だ」


 ヴァーリックが言う。いつになくきっぱりとした物言いに、オティリエは思わず立ち止まってしまった。


「僕に送らせてよ……お願いだから」


 手を握られ、まっすぐに見つめられ、オティリエの心臓がトクンと鳴る。


「それじゃあ、その……よろしくお願いします」


 ためらいがちにそうこたえたら、ヴァーリックは嬉しそうに笑った。

 使用人たちが暮らす塔までの道のりを二人並んで歩く。少し離れた位置から護衛騎士がついてきてくれていた。


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