【書籍&コミカライズ】魅了持ちの姉に奪われる人生はもう終わりにします〜毒家族に虐げられた心読み令嬢が幸せになるまで~
(なんだかとても申し訳ないわ)


 こんなふうにヴァーリックや騎士の手を煩わせるのが悔しい。オティリエが唇を引き結んでいると、ヴァーリックが「どうしたの?」と尋ねてきた。


「すみません。私が男性に生まれてきてたら、もっとヴァーリック様のお役に立てたのかなぁって思ってしまって……」


 オティリエの返事を聞いて、ヴァーリックは「えっ!?」と目を見開く。


「どうして? オティリエが男性だったら僕は困るよ。というか絶対嫌だ」

「だけど、男性だったらもっと体力もあったでしょうし、執務室で仮眠を取ることもできましたし、こうしてヴァーリック様に送っていただく必要もなかったわけで」


 への字型に眉を下げるオティリエを見つめながら、ヴァーリックはそっと目を細めた。


「女性には女性にしかできないことがあるんだ。そんなふうに気にしなくていいんだよ」

「……そうでしょうか?」


 だとしても、悔しいものは悔しい。オティリエの瞳に涙が滲む。


「それに、オティリエを送りたいっていうのは僕のエゴだ。そんなふうに思われたら、少し寂しい……かな」


 ヴァーリックがほんのりと眉を下げる。オティリエはあわてて「すみません」と口にした。


「謝らないでよ。これは僕のエゴ――わがままなんだから」


 ヴァーリックはそう言うと、オティリエの手をそっと握る。オティリエの心臓がドキッと高鳴った。


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