このままずっと甘い夜を 〜再会した元恋人は溢れる愛を押さえきれない〜
しかし、1週間ほど前からつわりがひどく、食べることができずに吐いてばかりだった。

日によっては、ずっと船酔い気分のままのときもある。


最悪なことに、それが今日だった。


でも、産婦人科の予約は10時半。

なんとしても…行かなくちゃ。


わたしは、よたよたとおぼつかない足取りでネットカフェから出る。


歩いて15分ほどの距離。

たったそれだけなのに、めまいがするわたしにははてしなく遠い道のりに感じた。


行き交う人々が波のように見えて、人酔いしそうになる。


と思ったそのとき、突然目の前が真っ白になった。

…あれ?と思ったときには、全身の力が抜けて――。


気づいたら、わたしはだれかの腕の中にいた。


「…大丈夫か!?」


この声は……。


わたしがゆっくりと目を開けると――。
< 58 / 88 >

この作品をシェア

pagetop