リングノート〜必ず君を甲子園に連れて行く〜

すれ違い

日野が出て行った屋上で俺は1人、

すずに気持ちを伝えるか悩んでいた。

親友に好きだって言われたら

キモいって思われるかもしれないし、

何より今の関係が壊れるのが嫌だった。

でも隠し事なんて出来ない性格の俺は、

やっぱりすずに本当の気持ちを伝えることにした。


次の日朝練が終わってあと、

すずを屋上に連れてきた。


「すず」「翔」

声が重なった。

「先いいよ」

俺がそう言うと、すずは話し出す。

「私さ、、、南雲先輩と付き合ってみようかなって思ってる。翔は私の親友だし南雲先輩とも仲良いから、先に報告しておこうと思って、、、」

俺は言葉が出なくなった。

「翔? それで翔は何言おうとしたの?」

「俺? 俺は、、、日野と別れた!お前には直接、それを伝えたかっただけ。」

好きだ。

その3文字が言えなかった。

「なんで別れたの?!」

日野が驚いた顔をしている。

お前の事が好きだって気づいたから、

なんてことは言えず、

「自分の気持ちがよく分からなくなった。」

とだけ言っといた。

「そっか、、、人生って難しいよね。」

そう言って空を見上げるすずの横顔を

俺は見ていた。

髪ゴムが緩んでいた。

気づいたら俺は、

その髪ゴムを取っていた。

「えっ?」

驚いたようにすずは俺を見る。

俺は、サラサラと落ちてきて

すずの頬にかかった髪を

すずの耳にかける。

そしてすずの頬に手を添えた。


俺はそのまますずにキスをした。


すずは驚いた顔をして動かなかった。

俺は、ごめん今のは忘れてくれ、

とだけ言って屋上を後にした。

俺は一体何をやってるんだ。
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