離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「じゃあ、さっそくだけど」
「あ、はい」

私は荷物──修学旅行で使ったボストンバッグに必要最低限のものをつめたもの──を置き、背負っていたリュックから一枚の紙を出す。

はいと渡すと、彼はなにもないテーブルの上にその紙を広げた。それは市役所でもらえる、いたってシンプルな婚姻届だった。

保証人の欄は既にお母さんに書いてもらってある。

これは契約結婚であることと事情を正直に話すと、お母さんは聞いてびっくりというか呆れていた。

『そんなことまでしてお金稼がなくていいよ。なんとかなるから』
『ならないよ。学費がなんとかなっても、お母さんの老後とか私の蓄えとか、いろいろいるんだから』

母は一応正社員だけど、手取りは多くない。

考えたくないけど、お母さんがもし病気などして働けなくなったら、弟の学費と家族の生活費、療養費を私の稼ぎだけで捻出するのには不安がある。お金があるに越したことはない。

『でもだからって、大事な娘がそんな変な結婚をさせられるなんて。いやらしいことされるわよ。ああ怖い』

たしかに、離婚前提の変な結婚には違いない。

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