離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「さあ、きみの番だ」

ペンを渡された私は、彼の手からテーブルの上の紙に視線を移す。

「夫になる人」の欄も角ばった字で埋まっている。そう、彼が今、その手で書いたのだ。
「はい」
「間違えるなよ」
「わかってます」

と返事をしたはいいものの、ペンを持つ手がどうしても緊張で震える。

本当にこれを書いていいのだろうか。

自分の中でもうひとりの自分が問いかける。

「えっと……」

もたもたしていたら、彼がおもむろに席を立った。

そして、私の後ろに回り込み、ぽんと肩を叩く。

「そう緊張しなくてもいい。これは離婚前提の契約結婚だ。本当の結婚じゃない」
「ひゃっ」

わざわざ顔を寄せて言うから、彼の息が私の耳朶にかかってくすぐったい。

耳を押さえると、反対側の耳に彼のくすりと笑う声が聞こえた。

もう。こんなときにからかわないでほしい。

先生って、こんなキャラだったっけ?

「わ、わかりましたからちょっと離れてください」

私はぎゅっとペンを握りなおす。

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