離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
「俺だって、実は猟奇的殺人鬼かもしれないし、幼女趣味の変態かもしれない」
「うわ」
「普通に付き合って結婚する人たちだって、結婚しなければわからないことなんて腐るほどあるんだから。お互いさまだ」

笠原先生の目は、仕事中とは違い、優しく細められていた。

「はい……」

初めて外来で事務員さんに塩対応しているのを見たときは、すごく冷たい人だと思った。

でもこうして話していると、やっぱり優しいほうが本当の笠原先生じゃないかと感じる。

単に仕事が忙しいからスタッフに厳しくなる。

患者さんに思いやりを使い果たすから、その他には塩対応になる。そういうことなんじゃないかな。

「よし、じゃあまずは俺が」

笠原先生はペンを持ち、キャップを取った。

さらさらとペンを走らせる音。それを奏でる長い指。

普段はこの手でメスを持ち、繊細なオペをこなしている優秀な心臓外科医である彼が、どうして平凡な看護師の私の向かい側に座っているのか。

今でも夢なんじゃないかと思っている。

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