離婚前提婚~冷徹ドクターが予想外に溺愛してきます~
私はもつ鍋を口に入れる。ぷりぷりしたもつの触感を楽しんでいると、千葉くんもニラを食べながら言った。

「先生、婚約者がいるっぽいからさ」

婚約者──。

ぽろんと手から箸が転げ落ちた。

「あ、わああ」

汁がついた箸が服に落ち、慌てておしぼりで拭いていると、隣の席にお客さんが入ってきた。

でもそんなの関係ない。数少ない服にもつ鍋のにおいをしみこませたくない。

下を向いて集中していると、上から低い声が降ってきた。

「きみたちは付き合っているのか。よく一緒にいるな」

聞き覚えのある声に、勢いよく上を向いた。

「かっ、かかかかか」
「笠原先生」

今まで少し酔っていた千葉くんがシャキッとする。

私は動揺してなにも言えなかった。

先生の後ろには、若い男の人がいる。ふたりとも私服だ。

おそらく後ろの若い人は、研修医かなにかだろう。黒い髪をツーブロックにした今どきの若い男の子って感じ。線が細くて、だぼっとした服を着ている。

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